「僕らが育てられている」阿部一二三・詩兄妹の強さを支えた家族の絆と心のアプローチ
4度目の兄妹金メダル、パリ五輪代表にスピード内定へ
――自国開催の東京五輪では兄妹同日金メダルという五輪史上初の快挙を達成して、今年5月の世界選手権では4度目のダブル優勝となりました。2人が圧倒的な強さで勝ち続ける姿をどのように見守っていらっしゃいますか? 浩二:大会までの期間は「負けたらどうなるんだろう」と心配することもありますね。でも、大事な時にきっちりと結果を残してきたのを見てきているので、大会が始まったら負けるイメージは持たずにいつも信じて見守っています。 ただ、一番緊張するのは初戦です。タイムを競う種目だと、目安になる記録がありますが、柔道は対人競技で何があるかわからない。一試合目はその日の出来がどうなるかと考えるので、どうしても緊張してしまうんですよね。 愛:私も同じような感じですけれど、やっぱり緊張はしますね。ただ、2人がいつも一生懸命やってきたのを見てきているから、信じて、近くで見守っています。 ――パリ五輪代表は今年6月に、2人とも内定が決まりました。大会1年以上前に決まるのは異例とのことで期待の大きさも感じます。東京五輪に続く大会2連覇がかかりますが、内定が決まった時はどのような思いでしたか? 浩二:大事なところでしっかり勝ってきたので、選ばれると信じてはいましたが、やっぱり聞いた時は安心しました。ただ、大事なのはその先だと思うので、僕たちもそこに目を向けています。 愛:プレッシャーもあると思いますし、前回は東京だったからコンディションも調整しやすかったと思いますが、パリ五輪は難しい大会になると思います。その中でも、できる限りのサポートをしていきたいと思っています。 ――詩さんのX(旧Twitter)の「人生死ぬまで通過点」という言葉が印象的でした。それも、阿部家の教育方針だったのでしょうか。 浩二:教育なんて、一度もしたことないですよ。逆に、僕らが子どもたちにずっと育てられているんです。みんなが彼らを見て楽しんでくれて、僕らもこんなに楽しませてもらってほんまに幸せですよ。この歳になっても子どもに感謝していますし、死ぬまでそういう思いでいられたらいいなと思っています。 ――最後に、お二人の目標や夢を教えていただけますか? 浩二:目標はパリ五輪優勝、2人の同日金メダルを見届けることです。それで、ロサンゼルス五輪まで行けたら最高やなと思います。でも、やるのは彼らなので、しんどくなる時もあるやろうし、そこに対しては何か言える立場ではないですから。自分たちが納得する道を選んでいってくれたらと思います。 親としての夢は、彼らに人としてもしっかりした道を歩んでほしいということです。それは、どんな親御さんも同じ思いじゃないでしょうか。 愛:どういう人生を歩んでいくかということも含めて、本人たちはしっかりやってきていると思います。最近は私たちがしてあげられることもほとんどなくなってきてしまいましたが、頑張っている姿がいつまでも見られたら一番ですね。 浩二:周りの人や環境にもすごく恵まれて、たくさんの方に応援していただいて今の2人があるので、僕らも感謝しています。彼らにも「絶対に感謝の気持ちは忘れたらいけないよ」と伝えてきました。 トップでい続けてほしいですけど、ピークがあれば、それがだんだんと下がっていつかは負ける時もあると思うし、ボロボロになって「あかんなぁ」っていう時もくると思います。でも、人生を振り返ったときに「いいものだったな」と思えるように悔いなくやってほしいし、2人で彼らの人生を応援したいと思っています。 <了>