タイパ(タイムパフォーマンス)とは?メリット・デメリットと、自分時間を豊かにするためのヒント
なぜタイパが求められるようになったのか
主にZ世代の間で、倍速視聴を始めとするタイパが求められるようになったのには、いくつかの要因があると考えています。 ◆技術の進化とコンテンツの氾濫 昔から本の速読や読み飛ばしをする人がいたように、「効率的に情報を得たい」という人間の欲望は、本質的にはずっと変わっていません。現代は、インターネットで膨大なコンテンツにアクセスでき、倍速再生しても音声を自然に保つ技術が開発され、多くの動画配信サイトに倍速再生機能がつくなど、テクノロジーとサービスが大きく進化しました。 「効率を上げたい」という需要があれば、関連ビジネスも拡大します。例えば映画やアニメ、時事問題など、あらゆるジャンルの「ダイジェスト動画」や「まとめ記事」がどんどん増加し、今や、時短や効果・効率に繋がるクリエイティブはネット上にあふれています。 人の欲望に技術が追いつき、それを意識する作り手も増え、その流れがますます加速していることは、タイパが広まった一つの要因と言えるでしょう。 ◆社会から「効果・効率」を煽られている Z世代は、キャリア教育などを通じて「やりたいことを見つけよう」「好きなことを見つけよう」と教えられ、またインターネット上で垣間見える大人たちの姿を通じて「無駄は避けて効率的に行動することが必要だ」と考えてきた世代であり、それもタイパを求めてしまう理由の一つだと考えています。 巷には効果・効率を重視したライフハックがあふれ、SNSからは起業家など成功者の声も数多く入ってきます。「成功するには勉強も仕事も効率的に」「人生で回り道する暇はない」といった世の中の圧が、若者の「効率を上げないとドロップアウトするのではないか」という不安を煽っているように感じます。 今は「いい学校を出て大企業に就職する」といった人生の「王道」ルートがなくなり、常に自身で道を開拓しないと生きていけません。やりたいことが明確な人にはいい時代なのかもしれませんが、そうではない多くの若者はいつも焦りを募らせていて、少しでも失敗をしたり、時間を無駄にしたりすることを嫌がる傾向があります。 映画を観る前にまとめ動画などで予習するのも、「自分の感性に合わない作品に時間を使いたくない」という気持ちがあるからでしょう。 ◆コミュニティーでの生存戦略として必要 今の若者の多くは、小学生時代から「多様性」の大事さを叩き込まれています。世の中にはさまざまな立場の人がいることを理解しており、会話の中で不要な意見の対立を生むことを避ける傾向があります。したがって、雑談の場では、社会情勢など意見が対立する可能性があるテーマで場を凍らせたくないため、無難な話題が必要になります。そこで選ばれることが多いのが、コンテンツや「推し活」の話です。 昭和の時代なら、「みんな知っている」「みんな観ている」人気のアイドルやドラマが存在し、それさえチェックすれば会話に不自由しませんでした。今は好きなアーティストもコンテンツも人によってバラバラですが、「人が楽しそうにしている話を聞くのは楽しい」「同じ推しを持つ者として理解できる」と、お互いの推しの話を語り合うスタイルになっています。 しかし、推す対象がない場合や、たまたま自分以外のみんなが、話題のアーティストや作品を知っているといったことが起きる場合があります。そうなると、自分が属するコミュニティーの会話についていくための「生存戦略」として、話題になったり、友達に勧められたりしたアニメやドラマなどを、片っ端から観ていくことになります。限られた時間で大量のコンテンツを観なければならないため、倍速視聴やネタバレ動画を使うなど、タイパを意識せざるを得なくなっているのです。 無論、もっと上の世代にも倍速視聴を好む人はいますが、純粋にそのジャンルの愛好家で、より多くのコンテンツを観るために利用するケースが多いようです。友達とのコミュニケーションを目的とするのは、Z世代特有の傾向だと言えるでしょう。