<私の恩人>伊原剛志 玉三郎からの意外な言葉が軸に
男らしい色気が漂う俳優・伊原剛志さん(53)。出演映画「家族の日」(全国順次公開中、19日からは東京・K's cinemaで上映)も公開されるなど、ますます精力的な活動を見せていますが、役者としての軸になっているのは、坂東玉三郎さんからの意外な言葉だと言います。
もちろん、お世話になった方はたくさんいるんですけど、この人がいたから今の自分がいると言えるのは、坂東玉三郎さんです。 最初の出会いは僕がまだ20代前半、この仕事を始めた頃でした。とても役者だけで食ってはいけず、アルバイトをしながら暮らしてました。そんな中、玉三郎さんが初めて舞台の演出をされる作品のオーディションがあって、僕も受けに行ったんです。結果、ありがたいことに、役をいただきまして。そこから「芝居とはなんだ」ということを教わりました。もちろん、オーディションの審査員として玉三郎さんもいらっしゃって、そこが最初の接点、ご縁の始まりでした。 舞台以外、プライベートでもすごくかわいがってくださいまして。玉三郎さんがおっしゃっていたのが「とにかく、いいものを観ておきなさい」と。実際、玉三郎さんが手配してくださってパリから来たバレエの公演を見せてもらったり、当時の僕は聞いたこともない(笑)クラシックのコンサートに連れて行っていただいたり。 さらに、玉三郎さんの家にも呼んでいただいて、そこに演劇の先生を呼んで一緒に演技の勉強をさせてもらったりもしました。まず、台本の読み方から教えてもらいましたね。文節をどう区切るのか。言葉のどこに意味があって、どう区切っていけば、その台本がよりおもしろくなるのか。そして、次はその言葉をセリフとして声に出して言う時の気持ちの置き方。まだいろいろなことが分かっていなかった時期でしたけど、その時期に、これでもかといいものを吸収させてもらっていたのは、今となってはただただ感謝しかないです。 玉三郎さんって、皆さんもそういうイメージがあるかもしれませんけど、確かに、凛として品の塊みたいな方なんです。関西人の僕からしたら、出会った頃は「この人と、何を話したらエエんや…」となるくらい(笑)。ただ、ただ、一緒にスナックとかに行ったら、すごく、僕ら若い者の話をおもしろがってくださって、たくさんアホな話をしました。