頭脳警察TOSHI ラストアルバム最終曲は「PANTAの遺言」 喪失感…「ボディーブローみたい」
伝説のロックバンド「頭脳警察」の最後のオリジナルアルバム「東京オオカミ」が5日にリリースされた。発売日は昨年7月7日に死去したボーカル、PANTAさんの74回目の誕生日。17歳で出会い、1969年の結成から看取るまで半世紀以上をともに過ごしたパーカッションのTOSHI(73)が、PANTAさんとの思い出とラストアルバムへの思いを語った。 【写真】懐かしそうな表情を見せるTOSHI PANTAさんが肺がんで余命宣告されたのは2021年8月。小康状態だった22年9~11月、本作のボーカルを集中的にレコーディングした。 TOSHIがPANTAさんのレコーディングに立ち会えたのは1回だけ。「すごく体調も良くてね。けっこう声も出ていて。まだ声も張れるっていうか、違和感ないよね。全然元気で、変わらなくて。『あれ?えらく歌うまくなったな』とか、メンバーとスタジオで話した」と振り返った。 本作のボーカルはPANTAさん本来の力強いシャウトに加えて、「冬の七夕」などは程よく力が抜けた円熟味も感じさせる。TOSHIは「若いメンバーの音がすごくツヤツヤしてる。それが新鮮だな。今までにない頭脳警察の音になったかな。音がキラキラしてる、ピチピチしてる」と本作の魅力を語り、最終曲「絶景かな」を「PANTAの遺言という取り方をしていますけど。自分がやって来たことに対して、最後は『絶景かな』って」と解釈した。 PANTAさんを看取った時のことを、TOSHIは「意識はあるけどしゃべれない状態で、ぜえぜえぜえぜえ、しんどそうな呼吸をしてただけでね。こればっかりは、皆逝くものだし、ねえ」と、何とも言えない表情で振り返った。頭脳警察のマネジャーは、TOSHIが「もういいから、PANTA休めや」と呼びかけるとPANTAさんの顔が安らかになったと明かし、「苦しまずに逝かれたのはTOSHIさんのあの言葉だと思っています」と話した。 TOSHIは喪失感が最近になって強まっていると打ち明ける。 「ボディーブローみたいに、死んだんだっていうのを実感しますね。ああ、もう隣で一緒に演奏することはないんだなって。半年ぐらいたってからジワジワ効いてきてる感じですね。そうだよな、半世紀付き合ったんだよなあ…。出会ったのが17か18か。音楽をやる上ではホントに幼なじみって感じだったからね」 TOSHIにとって、PANTAさんは「皆さんの友達と一緒」という存在だが、彼に惹かれた理由は「反骨精神を持っているっていうのに私はなびくっていうか、気持ちが一緒になるからねえ」というものだ。 PANTAさんのことを「不思議な人物だよ。いまだに分からない」と言うTOSHIだが、一方では「音楽、音ってのはウソをつけないから、そのまんま、その人がみんな出ちゃうものだから」と持論を述べた。「東京オオカミ」には、ウソのないPANTAさん、そして頭脳警察の今が表現されている。 ◆TOSHI(とし)本名・石塚俊明。1950年生まれ、東京出身。パーカッショニスト。68年、スパルタクス・ブントをへてPANTAと頭脳警察を結成。75年解散。90年再結成。約2年間活動。2001年から現在まで活動を継続。頭脳警察以外にも遠藤賢司さん、遠藤ミチロウさん、三上寛、友川カズキ、灰野敬二らとのバンド、ユニットや自身のバンド「シノラマ」、フリージャズの原田依幸グループなど幅広く活動。