前澤友作氏、METAへの「損害賠償額1円」提訴は「法的に無意味」か?…その理由とは【弁護士解説】
ただし、荒川弁護士は、第二訴訟を適法に提起できる可能性も、わずかながら考えられるとも指摘する。 荒川弁護士: 「たとえば、前澤氏の意図を最大限善意解釈して、『損害賠償額が全部で1円なんてあり得ない。常識的にみてどう考えても一部にすぎない。後日、前澤氏が他の部分の金額について改めて訴えを提起するだろうというのは織り込み済みだ』と考えることも、できなくはないかもしれません。 もし、この理屈が認められるなら、第一訴訟の訴訟物は『1円の損害賠償請求権』、第二訴訟の訴訟物は『それ以外の額に相当する損害賠償請求権』ということになります。 論理的にはやや苦しいですが、このように考えれば、第一訴訟の訴訟物と第二訴訟の訴訟物が異なるということで、第二訴訟の提起が認められる可能性がゼロとまではいえません([図表2]参照)」
では、仮に前澤氏が第二訴訟を適法に提起できるとして、第一訴訟の勝訴判決が、第二訴訟に影響を及ぼすことになるのか。 荒川弁護士: 「第一訴訟の訴訟物と第二訴訟の訴訟物はそもそも別個のものだというのが前提です。したがって、第一訴訟の判決における裁判所の判断が、第二訴訟の裁判所を拘束することはありません。 したがって、META社側は、第二訴訟に応訴して、前澤氏の主張する事実を争うことができます」
「訴えの黙殺」は信義に反しないか?
そうだとしても、META社側が第一訴訟を黙殺して『擬制自白』を成立させておきながら、第二訴訟で一転、前澤氏が主張する事実を争うというのは、いわゆる「訴訟上の信義則」(民事訴訟法2条後段)に反するのではないか? 荒川弁護士: 「META社側からすれば、たった1円の損害賠償請求に応訴して争うよりも、一切対応しない方が経済的負担が小さいのは明らかです。 したがって、経済合理性の観点から考えれば、黙殺するという判断をしても、訴訟上の信義則に反するとは言えないでしょう。 結局、META社側が前澤氏に応訴せず黙殺すれば、単なるパフォーマンスに終わってしまうおそれが大きいということです。 本件に限らず、『1円訴訟』は、徒労に終わるリスクが高いと言わざるを得ず、決しておすすめできるものではありません」
弁護士JP編集部