1年目にトミー・ジョン手術…3年ぶり支配下目指す巨人20年ドラ4、完全復活へ2軍で防御率1・06…【From G】
巨人のファーム選手の今を伝える「From G」。第5回は右肘手術からの完全復活を目指す育成の伊藤優輔投手(27)。20年ドラフト4位で入団も、1年目の21年11月に右肘内側側副じん帯再建術(トミー・ジョン手術)を受けて育成契約。育成3年目の今季は支配下再昇格へ好調を維持しており、同手術から1軍復帰を果たした山崎伊、堀田ら後輩に続く活躍を誓った。また、大竹寛2軍投手コーチが伊藤の好調の要因と長所を明かした。(取材・構成=小島 和之) 手術を乗り越えた剛腕が、完全復活へ近づいている。入団1年目の21年11月に右肘のトミー・ジョン手術を受け、育成選手として再スタートを切ってから約2年半。伊藤は今季、2軍で中継ぎとして16試合に登板して2勝0敗1セーブ、防御率1・06と抜群の安定感で支配下再昇格へのアピールが続く。 「昨年(5月に)実戦復帰してすぐの頃は、投げられるけれど違和感がある状態がずっと続いていた。ですが、オフを越えて春のキャンプからは肘に対する不安はだいぶ取れ、肘の状態と相談しながらではなく、打者と対戦しながら投球ができている感じがあります」 最速156キロの直球を武器に即戦力の期待を受け、1年目の21年は2軍で16試合に登板。しかし夏頃から右肘に違和感を抱え、オフにメスを入れることを決断した。保存療法ではなく、不安を取り除いて一からリスタートすることを選択した。 「自分をごまかしながら次の1年も投げ続けるより、きっぱりと手術をして『2年後に勝負』という形の方が不安を消すことができると思った。不安をなくすためには(手術は)早いほうがいいということで、球団とも相談して11月中にやる決断をしました」 幸いなことに、周囲には同じ経験をした仲間がいた。昨年限りで現役引退した奈良木陸氏(現球団スタッフ)は21年5月に、若手では山崎伊が東海大在学中の20年6月に、堀田も同年4月にトミー・ジョン手術を受けていた。順調に実戦復帰を果たし、現在は1軍で先発ローテ入りしている後輩たちの姿は大きな刺激になっている。 「2人(山崎伊と堀田)は実戦復帰間近という段階で、リハビリ期間がかぶっていたのは最初だけでしたが、ちゃんとした成功例があったので不安なくリハビリ期間は過ごせた感じがあります。同じ手術を経て、成功している人がいるのはすごく支えになるし、自分も目標にしていた。2人とも1軍で投げている姿を見て、リハビリが終わった今でもそこを目指してやっている部分もあります」 手術から実戦復帰までは約1年6か月。リハビリ期間で見つめ直したのは、けがの再発を防ぐために負担を少なく、効率的に力を伝えていくフォーム。投げられない期間でウェートトレーニングにも力を入れた結果、現在では投球に変化を感じている。 「プロに入ってからは150キロが出るか出ないかというくらいが続いていましたが、今は球速のアベレージが上がった感覚がある。(術前は)平均で147~148キロだったのが、今は150~151キロくらいなので、安定して速い球を投げられるようになったかな、と。フォーム改良によって抜け球が少なくなり、ストライクゾーンに自信を持って投げられていることが結果につながっていると感じます」 目指すのは3年ぶりの支配下復帰。結果を残すことは当然のこと、1軍から必要とされるためには、どんな役割が求められるのか―という点も思考しながら、マウンドで戦い続けている。 「試合展開にかかわらず、投げたイニングはゼロで抑えることをイメージして投げている。自分が1軍に上がるとしたら、負けパターンの登板も多くなるはず。2軍でも負けている展開での登板はあるので、そこで相手の流れを止められずに失点するのではなく、自分の投球に集中して投げることが大事。1軍でもそういった場面で結果を出していくんだ、というイメージを2軍のうちから持っておくようにしています」 育成投手では同期入団の戸田も防御率1点台をマークしており、「切磋琢磨(せっさたくま)しながら、すごくいい刺激を受けながらできている」と充実感が漂う。苦難を乗り越え、自信を深める初夏。再び2ケタの背番号をつかみにいく。 ◆大竹コーチ「コツコツ継続できる心の強さ」 伊藤の素晴らしい部分は、思うようにいかない時にもコツコツと取り組みを継続できる心の強さです。 キャンプでは球速が140キロ程度で制球もばらついていましたが、体の開きを抑える練習にも取り組みながら、4月には直球が150キロを超えて球威が戻ってきました。継続はプロではすごく大事な能力です。成果が出て僕もうれしかったし、結果が出ていることで本人も変化を実感して、自信をつかんでいると思います。 もともとカットボール、フォークと変化球も得意ですし、制球力という投球の土台がある中で、直球のコース、高さを投げきれるようになってきました。もう一段階、成長を求めるとすれば、丁寧にいきすぎてしまう部分があるので、大胆さを身につけてほしい。結果が欲しい気持ちは分かりますが、変化球に頼り過ぎずに直球で押す投球を目指していけば球数も抑えることができますし、中継ぎの一角として光が見えてくると感じています。(2軍投手コーチ) ◆伊藤 優輔(いとう・ゆうすけ)1997年1月14日、東京都出身。27歳。小学3年から野球を始め、小山台3年春に21世紀枠で甲子園に出場も初戦敗退。中大を経て、三菱パワーでは社会人日本選手権8強。2020年ドラフト4位で巨人入団。21年11月に右肘手術を受け、同年オフに育成契約。178センチ、82キロ。右投右打。
報知新聞社