エボラ出血熱を正しく理解──感染経路、水際対策、最悪のシナリオまで 国立感染症研究所・下島昌幸
どのように感染するのか?
感染した動物や人の血液、体液(汗や唾液)、嘔吐物、排泄物などにウイルスが含まれていて、これが粘膜面や傷口に直接付着して感染します。コウモリやチンパンジーなどの野生動物の肉を食料とする過程や、患者の世話や医療行為を行う際に感染する機会があります。傷のない皮膚にウイルスが付着しても感染することはありませんが、見えない小さな傷があったとすればそこから感染する可能性はあります。 なお、感染したとしても発症前であれば、この人から他の人にウイルスが感染することはありません。また空気感染はしません。
拡大の経路、そして今回の感染拡大の特徴は?
これまでアフリカ中央部でもエボラ出血熱は発生していますが、医療体制の水準が高くないこと(病院数、スタッフ、医療機器、手袋、消毒剤の不足等)、衛生環境が良くないこと(汚染された水の利用等)、葬儀における風習(遺体を洗う等)、感染症の認識不足が主に感染を拡大させています。今回の西アフリカでの流行で目立つ特徴として、これらに加え先進国の取り組み方への抵抗感、政策の不十分な浸透、都市部でも流行し患者を把握しきれない状況があり、感染の更なる拡大に繋がっていると考えられます。
感染者がみつかった国では、どのような対応をとるべきか?
まず専門の病院や病院内の専門区画に感染者を入院させ、訓練を受けた医療スタッフのもとで、支持療法(電解質の補液や抗生物質の投与などを行なう療法)など適切な処置をいち早く開始します。入院の際あるいは入院中は二次感染がないよう、汚染の可能性がある場所や物の消毒、個人防護具の使用を欠かさないようにします。感染者が回復した場合でも、ウイルスが体内からいなくなったことを確認してから退院させます。 また、見つかる前に接触した人がいないかの調査も開始します。発症前に接触があってもウイルスがうつることはありませんが、発症してからであれば他の人にウイルスがうつる可能性があり、気づかないうちに感染が拡大してしまっている可能性があるためです。接触者がいた場合には、発熱などの健康状態の変化に注意を払います。 初めて見つかった国では、なぜ感染者がその国にいるのか、通常は流行国への渡航と患者との接触があったためだと考えられますが、感染ルートを特定し、再発防止や二次感染防止の対策をとります。