なぜ黒田は開幕投手に指名されなかったのか?
開幕投手はチームリーダーとしての象徴でもあり、日本人エースに任せる指揮官も少なくない。 だが、その一方で、開幕の1試合というよりも、むしろ、年間のローテーションをしっかりと守ることを重要視し、イニング数、クオリティスタート率に重きを置くという考え方の上、最初に投げる開幕投手を、その中心に添えたいという捉え方、定義もある。 メジャーの開幕投手に対する価値観もそうだが、緒方監督も、「開幕戦は143分の1だけど、開幕投手はローテの軸になる部分が大きい。そう考えると黒田には無理をさせたくない」と語っていた。メジャーで投げてきた黒田も、「日本ほどメジャーでは開幕、開幕と特別視はされない」と話していたことがある。黒田を開幕投手に指名しなかった理由は、まさにこの定義から導かれたものだ。 黒田は、この2月で41歳となった。昨季は、中4日登板に応えたこともあったが、2度、登録を抹消されるなど、年齢による肉体の回復力の遅れは否定できず、昨年オフもギリギリまで、引退か、現役続行かに悩んだ。「もし優勝していたならば辞めていたかもしれない」とも語っていた。 今季も「1試合、1試合、先を考えて全力を尽くす。どこで(肩が)飛んでしまうかもしれない」という悲壮な決意は変わらない。それだけに首脳陣は、黒田に関しては中6日、短くとも中5日の間隔を空けて、回復時間を十分に与えながらローテーションに組みこむ計画を固めた。無理することよりも、シーズンを通じて安定したコンディションを維持してもらうことがチームにとってプラスになるのではないか、という考え方だ。黒田本人と、コーチングスタッフが話し合って出てきた結論だともいう。 開幕投手が、もし中6日の登板間隔となると、ローテーションは組み辛い。ジョンソンならば、25日の横浜DeNA戦に先発した後も、中5日で31日の中日戦に回すことができるし、4月6日のヤクルト戦、12日の中日戦と、フル稼働させることが可能になる。マエケンが抜け、大瀬良が開幕絶望の緊急事態だけに、4月には中4日起用も、ジョンソンならば可能なのかもしれない。つまり、黒田の力を最大限に発揮する環境を整えながら、頼りになるジョンソンを活かすためには、ジョンソン開幕投手しかなかったわけである。名より実をとったメジャー型の広島戦略。その成否は、シーズンの最後に明らかになるだろう。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)