800ホテル12万室を超えたアパ社長76歳…3階建て自宅の40数段のらせん階段を1日最低でも10往復するワケ
朝、起床したら真っ先にやるのはベッドメイキング。帰ってきたときにベッドが汚いと、なんとなく気分よく眠れない気がして、欠かさず綺麗にしています。 それからお洋服に着替えて、ばっちりお化粧もします。おしゃれをすると気分も上がるし、何より一日のスイッチが入ります。仕事に出かける服の上からエプロンをして、朝食をつくったりお洗濯をします。 朝のルーティンは毎日ほぼ同じです。もともと主婦業や社長業は1年365日お休みがありませんが、多少ゆとりのある土日でも、欠かさず早起きします。日曜日は、朝5時半から『洋子の演歌一直線』(テレビ東京)という30分の歌番組を見ます。広告塔として歌手活動もしているので、半分はお勉強で、半分は自分の楽しみかな。番組を見終われば平日と同じで、ベッドメイキングからまた一日が始まります。 私が快眠できているのは、このルーティンを規則正しく続けていることが大きいでしょう。毎日同じ流れで動いているから、時間がくれば自然に眠くなるし、時間がくれば自然に目覚めるんです。 ただ、ほかにも心当たりはあります。実は2年前にグループの体制が変わりました。それまで旦那様は帰宅が遅く、それに合わせて私は2時就寝、7時起床が習慣になっていました。会長就任を機に旦那様が早く帰れるようになって、一日の流れが2時間前倒しに。生活リズムがいったん変わりましたが、“時差ボケ”はまったくなく、すぐに切り替えられました。リズムが変化しても快眠できたのは、規則正しい生活のほかにも何かポイントがあるからでしょう。 ■こうすべきと考えた瞬間にストレスになる ひとつは、日中によく動くことが良い睡眠につながっているのではないかと思います。自宅は3階建てで、宅配便が来るたびに四十数段ある螺旋階段を下りていきます。少ない日でも一日に10往復。仕事で歩き回るうえに階段を頻繁に上り下りするので、体が適度に疲れてぐっすり眠れます。 精神的なストレスに縁がない性格であることも大きいですね。仕事をしていれば、うまくいかないこともあります。でも、落ち込むのは一瞬だけ。商談が失敗しても、残念だと思った次の瞬間には「もっといい物件に出合うために必要だった」と考えています。その場でさっと切り替えるので、仕事の不安や心配事は寝室どころか自宅に持ち込むことがないのです。 むしろ仕事は楽しいことのほうが多いです。そもそもこの年齢になっても最前線で仕事をさせてもらえるのは本当に幸せなこと。「今が人生で一番楽しい」と言ってきましたが、それは今も同じで、楽しさを更新中です。 私は生まれつき楽天的な性格なので毎日気持ちよく眠れますが、そうではないビジネスパーソンは、目いっぱいに仕事をして成果を出すことが最高の睡眠薬になるかもしれないですね。明日は今日よりもっと良くなると信じていれば、余計なことを考えずにベッドに入れます。そう信じるには仕事を頑張って結果を出すことが一番です。 何より大切なのは、毎日を楽しむことです。私のルーティンをお話ししましたが、毎日楽しく過ごせているなら、睡眠の取り方なんて気にする必要はない。こうすべきだと考えた瞬間にストレスになるので、好きなことを好きなようにやればいいんです。結果的にそれが気持ちのいい眠りにつながるのではないでしょうか。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月5日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 元谷 芙美子(もとや・ふみこ) アパホテル社長 1947年、福井県生まれ。高校卒業後、福井信用金庫に入社。金融機関の会合で元谷外志雄と出会い、結婚。71年夫が起業した信金開発(現アパグループ)に入社。94年アパホテル取締役社長に就任。 ----------
アパホテル社長 元谷芙美子 構成=村上敬 撮影=石橋素幸