乱立!価格競争激化で淘汰が進む「フィットネスクラブ」…トレーナーの知識不足で全治1ヵ月の事故も
コスト高、人手不足…未熟なトレーナーによる事故も
日本のフィットネスクラブ業界の状況について、日本フィットネス産業協会(FIA)の松村剛事務局長は次のように説明する。 「コロナで利用者がいったんいなくなり、すべては戻ってきていない状況にある。そこにエネルギー価格上昇などで光熱費や水道料金といったコストが上がっています」 FIAには100社ほど加盟しているが、松村さんは「そのなかで倒産したのは1件くらいと聞いている」と話し、加盟会員に限ればそれほど倒産は出ていないという。 フィットネスクラブにはジムやスタジオ、プールなどを備えた総合型と呼ばれるものがある。松村さんによると、オーソドックスなところで利用料が月1万2千円くらい。たとえばプールだけの施設は’80~’90年代に増えたが、設備が老朽化するなどで経営が厳しくなり、閉鎖するところが増えているそうだ。 最近のフィットネスクラブ業界は多様化している。松村さんは「従来通りでは経営が厳しいのですが、会費収入だけでなく、新たな収入源を取り入れるなど、新しい流れが出てきています」と話す。好調な子ども向けや、大人向けにマンツーマンで時間料金のトレーナーがついて指導するなど、“新しい付帯サービス”が出てきているという。 松村さんも「業界の多様化が進み、利用者の選択肢は増えている」と話す。一方で、「安全性の確保や、利用者の目的に合った段階的なトレーニングを考えていなくて、事故も起きています」と言う。 スポーツジムなどではパーソナルトレーニングによる事故や健康被害が起きており、消費者庁が関係者へのアンケート調査を検討するなど実態解明に動いているが、難しさもあるようだ。消費者庁の中川丈久委員長は2月の会見で、「個人のトレーナーに対してアンケートはリーチするのがなかなか難しい」などと話し、次のような認識を示した。 「パーソナルトレーニングのそのサービスの実態がどうなっているのかとか、一体どこまでの範囲がパーソナルトレーニングの事故につながっているところなのかというあたりをしっかり押さえなくてはいけない」 一般の人がトレーニングをする際に、松村さんは「自我流を構築できるまで、専門家に教わったほうがいい」とアドバイスする。一方で、「プロは“安全限界”と“有効限界”を意識していないといけません。プロの多くはできていますが、ここが見極められないトレーナーが増えていて、ケガをする人が出ています」と話す。