週刊・新聞レビュー(11・25)「朝三暮四解散 『われわれ有権者はサルなのか』」徳山喜雄(新聞記者)
「『勝てば官軍』である」
衆院が11月21日に解散し、安倍晋三内閣は同日の臨時閣議で次期衆院選を12月2日公示、14日投開票と決めた。衆院は自民、公明の連立与党が3分の2以上の議席をもち、任期も2年余り残すなかでの解散で、大義名分のつけにくい衆院選となる。 「いましかない。消費増税先送りをとらえて衆院を解散して、準備不足の野党をこっぱみじんにしてしまえ――。もし私が首相だったら、やっぱりそんな衝動にかられたに違いない」 と、朝日新聞11月23日朝刊のコラム「政治断簡」で編集委員が解説。「『大義なき解散』と非難されても、『勝てば官軍』である。早めに野党再生の芽をつぶせば、政権の寿命を一気に延ばせるだろう」とつづけた。 そうだとすれば、政治の王道からはずれるかもしれないが、なんともしたたかな解散劇だといえよう。 安倍首相は「アベノミクス解散」と自ら命名した。 これに対し、何紙かが識者の命名を載せた。読売22日朝刊のコラムニスト泉麻人さんの「予防接種解散」もなるほどと思えた。「支持率が落ちる前に何とかしたいという意図がうかがえることから、冬によく行われるインフルエンザの予防接種から連想した」という。 毎日が22日朝刊に掲載した、神戸女学院大名誉教授の内田樹さんの「朝三暮四(ちょうさんぼし)解散」も意味深長だ。 「エサを減らしたい飼い主に『朝三つ、暮れ四つ』と提案されたサルが、『朝四つ、暮れ三つ』と言い直されて喜んだ、という中国の故事にちなんだものです。消費再増税は延期するだけで、結局は実施されます。まさに朝三暮四のトリック。……サルのように判断力がないと考えているかのようです」と説明する。 朝日の23日朝刊のコラム「日曜に想う」も同じように「朝三暮四という言葉が思い浮かぶ。愚かなサルは……えさが三つに減る暮れのつらさが朝には想像できない。……われわれ有権者はサルなのか」としていた。