【ホープフルS】クロワデュノール3連勝で戴冠 クラシック制覇へ夢ふくらむV
単勝1.8倍の断然人気に推されたクロワデュノールが好位追走から抜け出し、デビュー3連勝でGⅠ初制覇。北村友一騎手(38歳)=栗東・フリー=は骨折による長期休養を経て2020年有馬記念(クロノジェネシス)以来のGⅠ制覇を飾り、大粒の涙をこぼした。2着は6番人気ジョバンニで、3着には向こう正面で先頭に立った17番人気ファウストラーゼンが粘り込んだ。 ◇ 大けがを乗り越え、表彰台に戻ってきた。懐かしい光景に、思いがあふれた。1番人気のクロワデュノールが、無傷の3連勝でGⅠタイトルをゲット。2020年有馬記念以来、4年ぶりにGⅠのお立ち台に上がった北村友騎手は、人目をはばからずに号泣した。 「またGⅠを勝つことができました。本当にたくさんの方々に助けていただき、応援していただいて、ここにまた導かれたのだと思います。本当に皆さんに感謝の気持ちを言いたいです。ありがとうございます」 デビュー14年目の2019年、大阪杯(アルアイン)でGⅠジョッキーの仲間入り。翌年にはクロノジェネシスで春秋グランプリを制覇し、軌道に乗ったかと思われた。しかし、21年5月2日の阪神2Rで落馬し、背骨や肩甲骨を骨折する大けが。リハビリは1年以上に及んだ。先の見えない戦いに心が折れそうになったとき、原点に立ち返った。 「馬に乗ることが好きで、馬が大好き。それが一番楽しいし、一番のモチベーションになりました」 サラブレッドへの思いを原動力に変え、劇的なカムバックを果たした。この日は相棒とロケットスタートを決め、出入りの激しい展開にも動じずに好位を追走。抜群の手応えで抜け出し、2馬身差をつけてゴールに飛び込んだ。 「うまく誘導してくれて、馬もそれに応えて勝ち切ってくれました。やりたいことを全てやってくれました」。斉藤崇調教師は鞍上と固い握手を交わした。運命の巡り合わせか、4年前にグランプリを制したコンビで再びの戴冠だ。「クロノジェネシスのときに良くしてもらえて、引退まで乗ってもらいたいと思っていたなかでの大けがだったので…。またGⅠを勝てたのはうれしいことですし、あのときできなかったことを、この馬と一緒に実現できれば最高ですね」と夢の続きに思いをはせる。 次走は明言されなかったが、当然、視線はクラシックをとらえる。ジョッキーが「可能性のある馬ですし、これからどれだけ成長してくれるか楽しみ」と語れば、指揮官も「皐月賞と同じ舞台で勝てたのは自信になるし、胸を張って来年に向けて頑張っていけます」と意気込む。クロノでかなわなかったクラシックの頂へ。冬空に昇った一等星が、止まっていた時計の針を動かした。(山口遥暉)