阪神・豊田が打線にもたらした新しい風 チームの閉塞感打ち破るプロ初安打
◇交流戦 阪神5-0オリックス(2024年6月13日 京セラD) 【畑野理之の談々話】 阪神にもようやく新しい風が吹いた。豊田寛が2回2死一塁で右前打を放つ。プロ初安打の記念球が届けられたベンチは盛り上がり、京セラドームもビジターゲームとは思えないくらいの大歓声に包まれた。 4回は1死一塁から左中間フェンス直撃の二塁打で二、三塁へチャンス拡大。ホームランまであと30センチ足りなかったが、この1本が勢いをもたらし、一挙4得点につながった。 待望の新戦力だ。深刻な得点力不足に悩む岡田彰布監督は打線を大改造。並びを変えるだけでは効果はなく、佐藤輝明に続き、現在は大山悠輔、シェルドン・ノイジーも2軍に落とすなど大手術した。しかし、やりくりしようにも代わりに上がってくる選手に新しい顔がいないのが気になっていた。 昨年ドラフトでプロ入りしたルーキーたちのうち、すでに33選手が1軍デビュー(6月12日まで)したが、12球団のうち阪神だけが一人もいない。最多はDeNA、西武、ソフトバンクの5人。ヤクルト4位捕手の鈴木叶が12日のソフトバンク戦で初出場して初安打初打点で勝利に貢献。対戦相手のオリックスでも6位の古田島成龍がデビュー以来20試合連続無失点を続けている。負傷者や主力選手の流出などチーム事情もあるが、うらやましく見えていた。阪神に閉塞(へいそく)感があった理由の一つでもあった。 日本一になった昨年からのオフの目立った補強は新外国人のハビー・ゲラと、現役ドラフトでオリックスから獲得した漆原大晟くらい。ほとんど欠けることなく同じ布陣で今季開幕をスタートしたから大丈夫だと思っていたが、そのことが逆に連覇への落とし穴になってしまっていた。 豊田は社会人の日立製作所から21年ドラフト6位で入団した3年目、27歳。新人ではないものの、まだ2年ぶり3度目の先発出場なので新戦力には違いない。大山や佐藤輝の打撃不振はチームには非常事態だが、控えの選手には大チャンス。「失策は緊張したんやろうなあ。でも(打撃で)取り返したんやから十分よ」。岡田監督がこんなにうれしそうに試合を振り返るのは久しぶりだった。