アギーレ新監督の所信表明を読み解く
アギーレ新監督は母国メキシコ代表と日本代表のプレースタイルが似ていると指摘した上で、最優先させる強化ポイントとして「守備を固めて勝利を目指したい」と明言。理想とするディフェンダー像を問う質問にこう返している。「ディフェンダーというよりもバランスを重視したい。守ることも攻めることもできる選手を求めている。守れることは重要だが、ボールを奪うこと、そして的確にボールを拾って上がっていくことも重要。守るということはディフェンダーだけではなく、FWにもMFにも求めたい。ディフェンダーは4人ないし5人じゃない。全員が守れて、攻められるチームを目指したい」。 ワールドカップ・ブラジル大会の決勝トーナメント1回戦で、メキシコはオランダをあと一歩まで追いつめた。攻守を素早く切り替えた上で全員攻撃、全員守備を掲げる戦い方はPK戦の末にブラジルに屈したチリ、大旋風とともにベスト8に進出したコスタリカを含めて、ブラジル大会で強烈な印象を残したチャレンジャーたちの共通項だと水沼氏も指摘する。 「決して強国とは呼べないチームがワールドカップの舞台で勝つことを追求していくと、最終的にはリアリズムに行き着く。日本がグループリーグで敗退した2006年のドイツ大会、そして今大会を振り返れば、残念ながら守備が崩壊していた。これから強くなってこうとするチームは、ただ攻めるだけではワールドカップで結果を残すことはできない。その意味では、メキシコを2度決勝トーナメントに導いたアギーレ監督の言葉には説得力があると思う」。 新生日本代表の初陣は、9月5日に札幌ドームで行われるウルグアイ代表戦となる。アギーレ新監督は「時間は足りないかもしれないが、やる気はいっぱいだ」と今週末のJリーグから視察を開始。直近の試合映像も取り寄せるなど、「自分が実際に見ることを重要視したい」と意気込んでいる。「国内、海外でプレーしているすべての選手に代表のドアは開いている。試合以外の時間にどういう行動を取るかもみていきたい。選手選考のプロセスは時間がかかる。次の試合に招集したからといって、チームに長期とどまる選手だということはない。観察しながら最終的なチームをつくりあげたい」。 ベースとして掲げたシステムは「4‐3‐3」だが、「選手の状況や試合展開によって変えていきたい」とフレキシブルに対応していくという。この点にも水沼氏は賛同する。「4‐3‐3と言っても中盤にトップ下の選手を置くのか、あるいはボランチタイプを3人並べるのか。守備のブロックを作るときには4‐1‐4‐1の形となるかもしれない。憶測や議論を呼ぶだろうし、実際にはアギーレ監督が選手たちを見てみないとわからないと思う。ただ、ゲームの中でシステムを変えるためには選手の能力も問われてくるし、そうしたチャレンジによって日本代表の中に引き出しが増えるのは非常に喜ばしいこと。選考には時間がかかると言っているように、どんどん選手を入れ替えながら、最終的には4年後のロシア大会で勝てる選手が残っていくのだと思う」。 アギーレ氏が掲げるサッカー哲学は三カ条。いずれもシンプルなものだ。「とにかくたくさん走る。いいプレーをする。そして、勝利を収める。自分たちは国を代表して戦っているんだと肝に銘じてほしい。各自が責任を持って責務を果たすことが大切だ」。