高橋ヨシキが映画『Cloud クラウド』をレビュー!
日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 転売屋に予期せぬ恐怖が降りかかるサスペンススリラー! * * * 『Cloud クラウド』 評点:★4.5点(5点満点) 平面的な人間の前で地獄の扉が開く 「こういう話なんだな」と思って観ているうちに、どんどん別の場所に連れて行かれてしまい、最終的に異次元に突入するような映画は最高だ。そうした作品には驚きと興奮と戦慄が満ちているからで、本作はまさにそういう映画である。 主人公はネットを利用した「転売屋」で荒稼ぎをする若者で、いみじくも「転売屋」という仕事が象徴するように、果てしなく虚ろな人間だ。「転売屋」は自身が何の興味もない商品を、単に金目当てで買い占め転売するだけの仕事であり、そこには志向性も責任も生まれようがないのである。 ところが自宅に突然車の部品が投げ込まれるなど不穏なあれこれが発生する中、主人公は「自分が無責任であったがゆえに生じさせてしまった、別の無責任な悪意」に追い込まれて深く暗い闇の中へと落ち込んでいく。 共感の余地が全然ない、べたっとした平面的な人間「しか」いない尋常ならざる作品世界が「リアル」に思えてくるところにもぞっとさせられるが、異常な世界「ならでは」の異常な映画的カタルシスもあり興奮させられた。 『シンドラーのリスト』でしかお目にかかったことのない「撃たれた人が意外な方向にバウンドして死ぬ」描写もあってサービス満点。 STORY:町工場で働きながら転売屋として日銭を稼ぐ主人公。ある日、工場を辞め、郊外の湖畔に事務所兼自宅を借りて、恋人との新生活をスタートさせる。しかし、彼はえたいの知れない集団による"狩りゲーム"の標的となってしまう 監督・脚本:黒沢清出演:菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、窪田正孝ほか上映時間:123分 9月27日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国順次公開予定