イーライリリーのアルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」をFDAが承認
米食品医薬品局(FDA)は7月2日、イーライリリーの薬剤「ドナネマブ」をアルツハイマー病治療薬として承認した。臨床試験において認知機能の低下を大幅に遅らせる効果が示されたこの実験的治療薬は、市場への投入は数年遅れていた。 イーライリリーによれば、同社のドナネマブ(商品名キスンラ)は、18カ月間の試験で「非常に意義深い結果」を示し、アルツハイマー病患者の認知機能および日常生活機能の低下を遅らせたことから、月1回の注射薬として規制当局の承認を受けたという。 1700人以上の参加者を対象とした試験では、イーライリリーは患者を初期または進行期の病状に分類した。両グループにおいて、ドナネマブで治療を受けた参加者はプラセボ群と比較して、病状悪化のリスクが39%低下した。 イーライリリーによると、約17%の患者が6カ月の治療後にドナネマブの使用を中止でき、47%が1年以内に、69%が18カ月以内に中止できたという。さらに、薬の使用を中止した後も認知機能の低下が継続的に遅延したと報告されている。 キスンラの1年(12カ月)分の治療費用は3万2000ドル(約517万2000円)、6カ月分は1万2500ドル(約202万円)以上、18カ月分は約4万9000ドル(約792万円)となる見込みだと、イーライリリーは述べている。
高価な薬価に疑問も
ドナネマブは、FDAがアルツハイマー病治療薬として承認した2番目の薬剤である。最初の承認薬は、バイオジェンとエーザイが開発したレカネマブ(商品名レケンビ)で、昨年承認された。レカネマブはドナネマブと同様に、専門家の一部が疾患と関連づけている脳内のアミロイドタンパク質の蓄積と戦う仕組みだが、2週間ごとに投与され、十分なアミロイドが除去された後も治療が継続される。レカネマブ1年分の費用は約2万6000ドル(約420万2000円)となるが、イーライリリーのアン・ホワイト執行副社長はニューヨーク・タイムズに対し、ドナネマブの高額な価格設定は、十分なアミロイドが除去された後に患者が治療を中止できるという期待を反映したものだと述べた。 イーライリリーは昨年、ドナネマブの後期臨床データを発表し、医療機関や専門家から規制当局の承認を求める声が上がった。FDAは3月にドナネマブの承認決定を延期し、薬の安全性と有効性についてさらなる精査が必要だと述べた。この延期は、薬の効果が統計的に有意ではないという懸念や批判、また脳内のアミロイドタンパク質を除去しても認知機能の低下を効果的に遅らせることができないという意見を受けてのものだった。さらに、CNBCによると、後期試験で3人の参加者が副作用で死亡したことから、薬の使用中に脳浮腫や出血のリスクが高まることも懸念されていた。 イーライリリーとノボノルディスクの株価は米国時間2日の取引で最大4%下落した。これは、ジョー・バイデン大統領とバーニー・サンダース上院議員が、両社に対して薬品の「良心に反する高額な価格設定」をやめるよう呼びかける新聞記事を寄稿したことを受けての動きである。バイデン大統領とサンダース上院議員は、両社が提供する人気の高い減量薬オゼンピックとマンジャロの価格が、他国と比較して「容認できない」水準にあると指摘した。サンダース上院議員は数カ月前から、ノボノルディスクの薬価を批判している。これは、イェール大学の研究で、オゼンピックとウェゴビーの注射ペンの1カ月分の製造コストがわずか5ドルである可能性が示されたことを受けてのものだ。オゼンピックの1カ月分の費用は、米国では1000ドル(約16万2000円)だが、カナダでは300ドル(約4万8000円)だ。
Ty Roush