年会費620万円の「長生き」に特化したジム、伸びる「長寿経済」
高級スポーツジムのEquinox(イクイノックス)は、長生きをサポートすることを目的とした、会費が平均的な米国人の年収の70%近くに相当するプログラムの提供を開始した。運動にバイオマーカー検査や栄養指導などを組み合わせており、活況を呈する長寿経済を意識した取り組みだ。 新プログラム「オプティマイズ・バイ・イクイノックス」はラボ検査プラットフォームのFunction Health(ファンクションヘルス)との提携のもとに提供する。米CNBCテレビが5月6日に最初に報じた。年会費は4万ドル(約620万円)で、従来提供してきたパーソナルトレーニングや栄養指導に医療検査や睡眠トレーニング、マッサージを組み合わせている。 同プログラムには臓器の健康状態からがん遺伝子、栄養レベルまで100のバイオマーカーを測定する検査と、体力や心肺能力、柔軟性などを測定するフィットネステストが含まれている(各年2回)。 CNBCによると、イクイノックスの基本会費に加えて月3000ドル(約46万円)かかるこのプログラムでは、1時間のパーソナルトレーニングのセッションを週3回と、栄養コーチや睡眠セラピスト、マッサージ師とのマンツーマンのセッションを週計16時間受けられる。 まずはニューヨーク市、そしてテキサス州ダラス近くの裕福なエリアのハイランドパークで試験展開される。 米労働局によると、米国の2023年第4四半期の平均年収は5万9384ドル(約900万円)で、オプティマイズプログラムの会費はこの67%に相当する。 フィットネススタジオのSoulCycle(ソウルサイクル)もチェーン展開する非上場企業のイクイノックスは3月に、12億ドル(約1850億円)の負債の借り換えなどのために18億ドル(約2770億円)の資金調達ラウンドを完了した。
伸びる「長寿経済」
イクイノックスは1991年の創業で、世界中に107店舗を展開している。会員になるとフィットネスのグループクラスを回数制限なしで受けることができ、多くの施設にはスパやブティック、スナックバーが併設されている。会費は世界中のジムを利用するプランだと月405ドル(約6万円)。その他のプランは275ドル(約4万)からとなっている。イクイノックスの競合で、人気のあるジムの会費はずっと安く、Planet Fitness(プラネットフィットネス)は月10ドル(約1500円)から、Gold's Gym(ゴールドジム)のプランは15~50ドル(約2300~7700円)だ。 今回オプティマイズプログラムを立ち上げる1カ月前に、イクイノックスはFファンクションヘルスと提携してジムでラボテストを利用できるようにすると発表した。健康とウェルネスに関するあらゆるサービスの提供を目指している。 米フォーチュン誌が報じたところによると、米国の裕福な人々は実証済みだったり実験的だったりする長生きのための手法に多くの時間とお金を費やしており、いわゆる長寿経済の規模は2021年に52億ドル(約8000億円)に達した。同誌によると、昨年7月の調査では年収25万ドル(約3800万円)以上の人の46%が、自由に使える収入の大半を健康とウェルネスの向上に使うつもりだと回答。また、高所得の米国人は、生まれ来る子どもに遺伝子編集を行ったり、自分の意識をデバイスにアップロードしたりといった、より大胆なプログラムに参加することに積極的であることが示された。 脳のモニタリング装置を開発するテック企業Kernel(カーネル)の最高経営責任者(CEO)で富豪のブライアン・ジョンソンは昨年、若返りに年間200万ドル(約3億円)を費やしていることを明らかにし、話題になった。お抱えの医師団によると、ジョンソンの健康年齢はすでに生物学的年齢より少なくとも5歳は若い。運動や睡眠、食事、サプリメント、そして果てしなく続くと思われる医学検査など、極めて厳密な養生法により達成されたという。ジョンソンの実験には、10代の息子から血漿の提供を受けたり、衝撃波療法でペニスを若返らせる試みも含まれていると米雑誌ローリング・ストーンは報じている。ジョンソンは昨年11月に、「人間であることの未来」について書いた『Don't Die』を出版した。
Mary Whitfill Roeloffs