神田伯山&清野茂樹が語る「プロレスと仕事の共通点」「今年最大の驚きは『力道山未亡人』」
9月に全世界で公開されたNetflixドラマ『極悪女王』。1980年代の女子プロレスブームとレスラーたちの人物像を描いた同ドラマは、これまで格闘技の世界と縁遠かった人にも大きな影響を与えるヒット作となった。そんなプロレスの魅力について、講談師の神田伯山氏と『極悪女王』にも出演した実況アナウンサーの清野茂樹氏が語り合った。
* * * ──意外な交友関係だが、2人の出会いのきっかけは何だったのか。 清野「最初にお目にかかったのは、8年前。僕のラジオ番組にゲストで来てくださったのがきっかけです。当時、注目の講談師がいると聞いて、お江戸日本橋亭の高座に行き、DVDで『グレーゾーン』という講談を視聴して出演オファーしました。それ以来、イベントや番組で何度か共演させてもらっています。最近では、伯山さんが主任の寄席に呼んでいただいて、色物として出演させていただいています」 伯山「そうでした。そのラジオで出会ってからは様々なイベントやプロレス番組などでご一緒させていただきました。最近は新宿末廣亭の寄席にも清野さんが『実況芸』で、おそらく歴史上はじめて上がってもらっています。私は日本で一番の古舘伊知郎フリークの清野さんを信頼しきっています。 とにかく古舘伊知郎さんが大好きで、同時に逆恨みのように憎んでいてという、この愛憎が最高に面白いです。私にとってアナウンサーは古舘伊知郎と清野茂樹に限ります。古舘さんの個の魅力ですね。また私は古舘伊知郎さんと遠縁ということになってます。元は佐賀の古舘姓ですね」
「環状線の理論」
──2人の仕事である「話芸」「伝統芸」とプロレスに共通点はあるのか。 伯山「入場曲と出囃子、前座という存在。徐々に使える技も増えていくなど、プロレスとの共通点は多いです。寄席はプロレス的なトリに向かって盛り上がっていくような感じがある。格闘技的な潰し合いの会もあれば、生かし合いの会もあり、共通点は多々ありますね。師弟なども共通した面白い所だと思います。もっとも伝統芸能の世界では師匠に手を出しませんが、プロレスの世界では社長も殴れるので、良い世界だと思います。清野さんはどうですか?」 清野「お客様がいるというのが共通点ですかね。お客様に喜んでもらうことが最大の目的です。ただし、伝統芸能が師匠と弟子の関係性を築いて芸を継承しているのに対して、プロレスはその関係が曖昧になっている気がします」 ──「お客様」という言葉がありましたが、客を呼ぶために「興行」では何が必要になるのでしょうか。 清野「(アントニオ)猪木さんの言う『環状線の理論』だと思います。環状線の外、つまりジャンル外に向けた話題作りと技能でしょう。伯山さんは見事に実践されているので、素晴らしいと頭が下がります。これが出来るのが『選ばれた人』であり、ジャンルを背負える人なのでしょう」 伯山「いえいえ、ありがとうございます。清野さんの仰る通り、興行はお客様がいるかどうか、喜んでいただけるかが勝負で、それはチケットの売れ行きに出てくると思います。その上で満足度が要。そこはプロレスでも何でも全てに共通しているかもしれません」