日韓通貨スワップ復活へ議論 日本にメリットはあるの?
通貨スワップのメリットは?
メリットは主に韓国にあります。韓国のウォンは世界経済の影響を受けやすく不安定です。図1は韓国ウォンのドルおよび円についての為替レートの推移で、2008年からの世界金融危機の時に韓国ウォンが急激に下落(図では上方向)したことが分かります。韓国は、日本と似て製造業や輸出産業が中心の産業構造です。ただ、GDP(国内総生産)に占める輸出・輸入は日本よりも非常に高く、輸出の対GDP比率は45.9%(2015年,The Bank of Korea統計)です。日本も高まってきているものの、17.7%(2014年、国民経済計算確報)ですので、韓国経済がいかに世界経済に依存しているかがわかります。
日本人の感覚ではウォン安になっても輸出には有利なので、韓国にとって良いのではと思うかもしれません。けれどもそうではなく、ウォンへの信用が失われるので、韓国企業の貿易取引が難しくなったり、また、輸入価格が上昇するので生産のために必要なものが手に入らなくなったりします。また、韓国国内の物価が上昇するので生活が苦しくなります。 日本も戦後直後は外貨がなかったので、外国の物資を輸入することができませんでした(なお原油輸入は1949年まで禁止されていた)。それが1950年からの朝鮮戦争で、米軍が日本から戦争物資を調達しドルで支払ったことで、ドルを獲得できたのです。そこから、原油輸入の再開、石炭から石油への転換があり、高度成長が始まったのです。日本人には気が付きにくいのですが、外貨があって海外との取引が円滑に行われるというのは経済にとって重要なのです。 韓国の外貨準備は3577.6億ドル(韓国銀行統計、2016年第2四半期)で、まだ十分にあるようにみえます。たとえば比較すると、世界金融危機の時に韓国の外貨準備は246.4億ドル(2008年第4四半期)で、2006年第4四半期の1486.4億ドルから大きく減少しました。今、当時と同様な状況に陥っても外貨準備が底をつくまでには至りません。