韓国、ノーベル文学賞で「ハン・ガン」フィーバー 書店に客殺到、半日で13万部超売れる
【ソウル山口卓】韓国の女性作家、ハン・ガン(韓江)さんのノーベル文学賞受賞が決まって一夜明けた11日、韓国の書店は著書を買い求める人であふれ、二つの書店大手だけで十数万部を売り上げた。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領や人気音楽グループBTSのメンバーらが祝福するコメントを発表。「K文学」を世界に知らしめる快挙を国民が喜び合った。 【写真】オンライントークイベントを開いたハン・ガンさん ソウル市の書店大手「教保文庫」はハンさんの特設コーナーを設け、朝から行列ができた。予想外の受賞で本の在庫が足りず、出版社に追加を依頼したという。50代女性は「女性の地位が高くない韓国社会で、文学では女性が頭角を現していた。ノーベル賞を受賞するなら、女性作家だと思っていた」と話した。 インターネット書店大手のイエス24は注文が殺到し、接続に時間がかかる事態が発生。一時、売り上げの上位10位をハンさんの作品が独占した。韓国メディアによると、この二大書店だけで同日昼ごろまでに約13万部を売り上げたという。 尹氏は交流サイト(SNS)に「大韓民国の文学史上、偉大な業績であり、全国民が喜ぶ国家的な慶事だ」と投稿。革新系野党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)代表も「喜びの衝撃が全身を包み込む知らせだった」と語り、保革を超えて祝福した。 兵役中のBTSのVさんは「『少年が来る』を軍隊で読みました。おめでとうございます」とSNSに書き込んだ。韓国のネット上には、1960年代後半以降の高度経済成長「漢江(ハンガン)の奇跡」になぞらえて、「これぞハンガンの奇跡だ」との書き込みもみられた。 ハンさんの代表作「少年が来る」は故郷の光州で軍が民主化運動を弾圧した光州事件を、「別れを告げない」は軍や警察が左派勢力の武装蜂起の鎮圧を名目に、済州島民約3万人を殺害した「4・3事件」を題材とする。4・3事件の研究を続ける心理医学博士の金志玟(キムジミン)さん(34)は「ハンさんの作品が注目されることで、事件への関心や痛みへの共感が広がればうれしい」と話した。
西日本新聞