JPモルガン、注目の「トランジションファイナンス」の波に乗らず
(ブルームバーグ): 米銀最大手のJPモルガン・チェースは、ウォール街の多くの同業者が取り組んでいるトランジションファイナンスのトレンドに背を向けている。
トランジションファイナンスは、経済における炭素排出削減に最終的に役立つ活動への資本配分を指す言葉だが、規制のグレーゾーンに位置している。
同時に、脱炭素化のための企業の資金調達は巨大なビジネス分野であることが認識されており、アポロ・グローバル・マネジメントは最近、エネルギー転換は今後数十年で50兆ドル(約7530兆円)の投資機会をもたらす可能性があると試算した。
こうした中で、ウォール街の大手銀行の一部はトランジションファイナンスの枠組みを策定し、適格な資産や活動を定義しようとしている。公開文書やプロセスに詳しい匿名の関係者の話によると、ウェルズ・ファーゴやシティグループなどの銀行がこの取り組みに参加している。
一方、JPモルガンは参加を見送っている。
JPモルガンのサステナビリティー政策・規制グローバル責任者、リンダ・フレンチ氏は、何かをトランジション資産と呼ぶことが資本の解放につながるとは限らないと言う。結局のところ、投資家が高い関心を寄せているのは定義ではなく、資本配分が成果を生み出すという証拠だと指摘した。このアプローチはそれを無視していると論じた。
「自明なことだが、経済的に実行可能なビジネスケースがある場合にのみ、資金は動く」と同氏はインタビューで述べた。「分類法や情報開示の枠組みだけでは資金フローには何の影響も与えず、かえって混乱を招く恐れさえある」と主張した。
JPモルガンは、トランジションファイナンスの枠組みを策定するのではなく、「カーボントランジションセンター」と呼ぶものを社内に構築した。「低炭素社会への移行という課題に対処するために必要な洞察力と全社的な専門知識」を顧客に提供することが目的だという。
フレンチ氏は、重要なのはエネルギー転換に投資する企業が必要な資金にアクセスできるかどうかであり、投資する企業にとって経済的に機能しないのであれば、「トランジションファイナンス」について語ることに意味はないと指摘した。