元なでしこ鮫島彩の素顔とサッカー人生 信条を生んだ相棒の存在「だから上手くなりたかった」【コラム】
チームメイトは涙…笑顔のまま引退の言葉「素晴らしいサッカー人生でした!」
今シーズン、途中交代も含め、すべての試合に出場した。現役最後の試合はもっとも長く在籍した古巣INAC神戸レオネッサというカードにも恵まれた。攻撃では彼女の代名詞であるオーバーラップを試み、守備では相手の動きを見極めながらマイボールに引き込む。その場にいた誰もが「引退するパフォーマンスではない」と思ったに違いない。 彼女にまつわるエピソードは途切れようもないほど積み上がっている。それでも「やり切れた」と最高の笑顔で言われてしまえば、もう潔く受け止めるしかない。 引退の挨拶も、感謝を言い残さないように、丁寧に言葉を届けていた鮫島。最後までその笑顔が曇ることはなかった。対照的にそのうしろに並ぶチームメイトの涙は止まらない。改めて、このメンバーに送り出されたいと感じた鮫島の想いに触れた気がした。 「素晴らしいサッカー人生でした!」 鮫島が笑顔で告げた言葉がすべてなのだろう。応援してくれるサポーターの姿をピッチから見るのが大好きだったというその場面は鮫島がピッチを去る瞬間までNACK5スタジアムに広がっていた。 [プロフィール] 鮫島彩(さめしま・あや)/1987年6月16日生まれ、栃木県出身。河内SCジュベニール―常盤木学園高―TEPCOマリーゼ―ボストン・ブレイカーズ(アメリカ)―モンペリエHSC(フランス)―ベガルタ仙台レディース―INAC神戸レオネッサ―大宮アルディージャVENTUS。豊富な運動量や90分間衰えない走力をベースに、タイミングの良い上がりや球際での強さを披露し、攻守両面で長年活躍。日本代表通算114試合5得点。2011年ドイツW杯優勝、12年ロンドン五輪銀メダル、15年カナダW杯準優勝などに主力として貢献し、日本女子サッカーの発展に尽力した。 [著者プロフィール] 早草紀子(はやくさ・のりこ)/兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサポーターズマガジンでサッカーを撮り始め、1994年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿。96年から日本女子サッカーリーグのオフィシャルフォトグラファーとなり、女子サッカー報道の先駆者として執筆など幅広く活動する。2005年からは大宮アルディージャのオフィシャルフォトグラファーも務めている。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。
早草紀子 / Noriko Hayakusa