卑弥呼の謎に迫る古代吉備の至宝が崩壊危機 埴輪起源「特殊器台」修復プロジェクト始動
清家教授は「楯築墳丘墓は前方後円墳の起源、日本の国家成立の過程を探るうえで欠かせない貴重な遺跡」と説明。「他に類を見ない双方中円形の画期的な墳墓と特殊器台。歴史上に突如として現れ、突然姿を消した謎を解明しなければいけない」と力を込める。
■11日間で目標達成
岡山大は1980年代前半に特殊器台の復元を行った。それから約40年がたち、接着剤や石膏(せっこう)の耐用年数が迫り、自重に耐えられず亀裂の拡大や接合部の損壊などで「突然崩壊してもおかしくない危険な状態」(清家教授)にある。清家教授が着任した平成27年には既に亀裂は大きく、前任者から外部貸し出し禁止との引き継ぎを受けた。
昨年になって公益財団法人「住友財団」(東京都港区)からの助成金が確保でき、クラウドファンディング(CF)を実施する環境も整ったためプロジェクトを立ち上げ、吉田生物研究所(京都市山科区)の文化財部門に修復を依頼した。
いったん特殊器台を解体してすべてを破片に戻し、石膏の代わりに軽量の樹脂に使う最新の復元技術で修復、専用台を作製して脚部の保護を図る計画だ。令和7年3月に完了し、同年5月から岡山大学考古資料展示室で展示を再開する予定。学会などでの公開や博物館などへの貸し出しを再開し、講義にも活用する。
9月9日からCFで修復のための寄付150万円を募ったところ、わずか11日目で目標金額を達成した。「思った以上に関心が高くてありがたかった」と清家教授。修復が必要な小型の特殊器台もあるため、280万円を第2の目標金額として11月5日まで継続した。
清家教授は「学生が内部の技法が観察できるようになる。岡山県外の人たちにも見ていただく機会が増え、研究者や学生らにより弥生・古墳時代研究が一層促進される」と期待を寄せている。(和田基宏)