残高10ドル以上の「USDC」ウォレットが6割増加──サークルの金融スーパーハイウェイ構想の現在地
ブロックチェーン上で米ドルに連動するステーブルコイン「USDC」を発行し、デジタル通貨事業を拡大してきた米サークルは、10ドルを超えるUSDCの残高があるウォレットの数が過去1年で59%増え、270万個に達したことを明らかにした。 スイス・ダボスで1月15日から始まった世界経済フォーラム(WEF)の年次総会「ダボス会議」に参加しているサークル(Circle Internet Financial LLC)は同日、同社がまとめたレポート「USDC経済の現状(State of the USDC Economy)」を公開した。 サークルの共同創業者でCEOのジェレミー・アレール氏は、「インターネットが過去20年でデータ普及の限界費用をゼロにすることで、人類の知識を万人が利用できるようにした」とした上で、「インターネット上の金融スーパーハイウェイはまだ整備されていない。我々が行っていることはすべて、このインターネット金融システムを構築し、加速させることである」と、レポートで強調した。 2013年の創業以来、アレール氏率いるサークルは、米ドルに安定的に連動し、金融当局に認可されるステーブルコインの開発・発行を進めてきた。サークルが米ドルに着目した理由は明らかで、米ドルが世界の貿易取引や国際送金などで圧倒的な影響力を持っていることが背景にある。
強まる米ドル覇権、必要性増す「安い」デジタルドル
サークルのレポートによると、現在米ドルがラテンアメリカにおける貿易取引に占める割合は90%を超え、アジア太平洋地域では74%、欧州を除くその他の地域では79%のシェアを誇る。また、米連邦準備制度理事会(FRB)によると、1兆ドル相当の米ドル(存在する100ドル紙幣の3分の2を含む)は、米国の国外で保有されている。 国際送金の現状では、2022年に1,300億ドルの送金額がアジア太平洋地域に流入したが、200ドルを送金するための平均コストは5.7%であり、銀行を利用できない受取人にはさらに大きな摩擦が生じている(同レポート)。 現在、イーサリアム、ソラナ、アバランチなど15のブロックチェーンで展開しているUSDCは、従来の決済手段よりも速度が速いだけでなく、コストも低いと、報告書は強調する。 ブロックチェーン上のアプリケーションが最も多く、時に「ガス代」と呼ばれる手数料が高騰することで知られるイーサリアムでさえ、2023年のUSDCによる取引あたりの平均コストは1%。ソラナなどの他のブロックチェーンでは、0.1%以下だった。