田中有紀は10月に 山根綺、青山なぎさ、直田姫奈……ソロデビューを飾る声優アーティストの躍進
声優デビュー前の経験も糧にした、音楽というフィールドでの表現
楽器経験者という意味ではもうひとり、今年4月にデビューシングル「ラベンダー・ブルー」でアーティストデビューを果たした直田姫奈も忘れてはいけないだろう。彼女は2018年リリースのアプリゲーム『消滅都市2』ハルカ役で声優デビューし、同作発の声優ユニット・SPR5のメンバーとしても活動。2020年には『BanG Dream!』第4のリアルバンド・Morfonicaのギター・桐ヶ谷透子役を務めてさらに注目を集めると、アニメ『その着せ替え人形は恋をする』(TOKYO MXほか)の喜多川海夢役の好演などを通じて、2023年には『第十七回 声優アワード』で新人声優賞を受賞。声優としても、いっそうの活躍を期待される存在だ。 そんな彼女の音楽面でのルーツ的存在は、中高生の頃から憧れるYUIだという。高校生になってからはアコースティックギターを購入し、独学で練習して音楽へとのめり込んでいった経験は、実は声優アーティストとしての音楽性と地続き。ポップなサウンドにあどけなさと切なさを乗せて歌った失恋ソングであるデビュー曲「ラベンダー・ブルー」や、そのあどけなさを残しつつも楽曲に合わせてクールさやほのかなスレた感じを醸し出す2ndシングル「My Truth」といった、ギターの映えるバンドサウンドをベースにした、女性の心情を吐露するようなポップスを主軸に楽曲を制作している。 その他公式YouTubeチャンネルでは、今年5月に開催した『直田姫奈 Hina Suguta 1st LIVE - Sings -』にて披露された未音源化曲のライブ映像も公開中。そういった楽曲も含め、自身が音楽にのめり込んだ原体験から地続きの、“直田姫奈が活動する意義”のある活動から生まれる楽曲をぜひ堪能してみてほしい。 そしてもうひとりが、『ラブライブ!スーパースター!!』の一般公募オーディションをきっかけに声優としてのキャリアをスタートさせた青山なぎさ。同作の葉月恋役を担当するとともにLiella!のメンバーとして活動する彼女は、シエル役を演じる『SYNDUALITY Noir』(テレビ東京系)でも挿入歌「眩惑Desire」を歌唱。大学時代に所属していたミュージカルサークルとアカペラサークルで培った美しい歌声も武器のひとつとして、音楽とも関わりながら声優としての歩みを進めてきた。 そんな彼女は、自身の誕生日当日である5月16日にアーティスト活動をスタートすることを発表し、同日に初の配信シングル「解放」をリリース。楽曲の方向性やMVの内容や衣装に至るまでセルフプロデュースを手掛けたこの曲では、心の内に抱えていたものをにじませた自身が紡いだ歌詞をビッグバンドジャズに乗せて、さらなる強い想いを込めた美しくもぐっと力のある歌声をもって表現。その力強さとサウンド感の相性も良好だ。 さらに翌月には、支えてくれる人たちへの感謝を歌詞に込めた爽やかなナンバー「キミと」も配信リリースし、ガラリと違った一面をみせた青山。10月には1stアルバム『解放』をリリースし、11月には『青山なぎさ 1st LIVE 『KAIHOU』』も開催予定。アルバムの詳細については配信済みの2曲以外の収録曲は明かされていないため、今後発表される新たな情報も楽しみにしつつ、1stライブでの生のパフォーマンスにも期待したい。 その他にも今年は、立花日菜や千葉翔也といったCDリリースを軸にした声優アーティストもソロデビューを果たした。各々の個性を活かしながらそれぞれのスタンスで音楽活動に取り組む声優アーティストの表現にぜひ注目して、あなたなりのスタイルで楽しんでみてほしい。
須永兼次