西日本新聞　社説

　一歩間違えば大惨事になりかねなかった。地中に残る不発弾の危険性を再認識しなければならない。 　宮崎空港で先週、駐機場と滑走路をつなぐ誘導路に埋まっていた不発弾が爆発した。 　けが人はいなかったが、約2分前まで旅客機4機が通っていた。通過時に爆発していれば、離陸前に大量に積んだ燃料に引火し大変な被害を招いた恐れがあった。 　爆発したのは米国製の250キロの不発弾で、誘導路には直径約7メートル、深さ約1メートルの陥没ができた。爆発した原因は分かっていない。 　宮崎空港は1943年、旧日本海軍の航空基地として建設された。太平洋戦争末期には特攻隊の出撃基地となり米軍の攻撃目標とされたため、空襲で多くの爆弾が落とされた。65年度から2021年度までに空港内で5個の不発弾が見つかっている。 　国土交通省は宮崎空港に他にも不発弾が埋まっていないか再点検する。誘導路の付近や滑走路、駐機場周辺で運航に支障のない早朝や夜間に地中を磁気探査するという。 　爆発当日に埋め戻し作業を終え、航空各社の運航は翌朝再開された。宮崎県で最大震度6弱を記録した8月の地震との関連を危ぶむ声もある。徹底した再点検が急務だ。 　国交省は過去に敷地内や近辺で不発弾が見つかった福岡、仙台、那覇の各空港でも再点検を検討する。当然の対応だ。那覇空港では宮崎での爆発の翌日、やはり米軍の不発弾とみられる物が見つかり自衛隊が処理している。 　この4空港は国管理だが、自治体が管理する空港でも空襲を受けた場所に建設された例がある。管理者にかかわらず、危険性を重視して調査しなくてはならない。 　宮崎をはじめ軍用飛行場だった空港では、滑走路などを整備する際に不発弾の有無を調査してきた。不十分だったり、当時の探査技術では発見できなかったりした可能性がある。最新技術での再点検が欠かせない。 　空港で不発弾が爆発したケースは過去に例がない。宮崎空港側も想定していなかったという。福岡空港などで発着回数が増える中、離着陸時の振動などで地中の不発弾が爆発する懸念もある。 　不発弾問題に詳しい名桜大の大城渡教授（憲法学）は「全国の空港関係者も不発弾に対する認識を改め、空港の安全管理マニュアルに不発弾爆発事故の想定を加える必要がある」と提起する。これを機に検討すべきではないか。 　戦後79年となる現在も、空港に限らず不発弾が各地で見つかっている。防衛省によると23年度は2300件超の不発弾処理が行われた。 　今回のような自然爆発もこれまで全国で約20件起きており、国民の安全を脅かしている。 　不発弾の撤去は重要な戦後処理だ。戦争遂行した国の責任で取り組まねばならない。