【国立大の学費問題】授業料3倍でも教育の質は上がらない、英オックスフォード大・苅谷教授「元凶はバイトと就活」
■ 現実的には、教育格差は容認するしかない? ──給付型奨学金についてはどのように考えていますか。国立大の学費値上げは、給付型奨学金のセットで進め、教育格差を埋めよう、という声もあります。 苅谷:一部の国立大学が授業料を上げ、給付型の奨学金で対応すれば教育格差は必然的に広がります。授業料設定の自由度が高まるということは、エリート教育とそうでない教育の違いを認めるということだからです。 ただ問題は、あからさまな教育格差を国民が認めるかどうかという点でしょう。国家として必要な科学技術を発展させるために、文化的・経済的資本を持った家庭の子どもを対象とした国立大の授業料を上げるのも、エリート主義を認めるかどうかにかかっています。 いずれにせよ、今後少子高齢化が深刻になり、財政支出の多くが社会保障費に取られると、大学への公的な財政支援は縮小していくトレンドになっていくことは確実です。 大学教育も福祉の中に組み込んでいくという政策は、ジェンダー平等もいまだに実現できない保守系の政権が続く限り期待できないでしょう。 イギリスも、奨学金制度は充実しているといえ、階級社会です。親の所得による教育の不平等は歴然としています。日本も、現在の人口動態を見ると、残念ながら教育の不平等を容認していく方向にシフトしていく可能性は高いと思います。 問題は、これまで以上の不平等を日本人が受け入れる覚悟があるか、というところにあると思います。 (前編も是非ご覧ください) ■英オックスフォード大・苅谷剛彦教授インタビュー (前編)日本の大学が世界で勝てない本当の理由、英オックスフォード大・苅谷教授が疑問視する「実力」 (後編)授業料3倍でも教育の質は上がらない、英オックスフォード大・苅谷教授「元凶はバイトと就活」
苅谷 剛彦/湯浅 大輝