「ミヤネ屋」紀藤弁護士発言は”名誉毀損”とする統一教会の訴えが棄却 「スラップ訴訟」はマスメディアを“萎縮”させるのか
3月13日、「情報ライブ ミヤネ屋」にコメンテーターとして出演した紀藤正樹弁護士の発言で教団の名誉を傷つけられたとして、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が約2200万円の損害賠償などを求めた訴訟について、東京地裁は原告の請求を棄却する一審判決を出した。
訴訟の経緯
今回の訴訟は、2022年7月に情報番組「情報ライブ ミヤネ屋」にコメンテーターとして出演した紀藤弁護士の発言は事実と異なり、教団側の名誉を傷つける内容であるとして、紀藤弁護士と「ミヤネ屋」を制作する読売テレビに、名誉毀損に対する損害賠償を請求したもの。 具体的には、紀藤弁護士による「信者に対して売春させていた事件まである」という発言、および「お金集めのためには何でもする」という発言は虚偽であり教団の社会的評価を低下させた、と原告側は主張。 しかし、裁判所は両方の発言について真実性相当性や真実性を認めて、原告の請求をいずれも棄却。訴訟費用は原告の負担とする判決を出した。
「売春をさせていた」「お金集めのためには何でもする」両発言が真実と認められる
判断後の会見では、被告側の御船剛弁護士が判決の内容を解説した。 「信者に対して売春をさせていた」という発言について、被告側は実際に売春させられた女性の発言に基づく資料を証拠として提出した。 プライバシーに配慮するため女性は匿名であり、また資料には黒塗りの部分も多くあったが、裁判所は真実相当性(真実だと信じるべき正当な理由や根拠があること)を認めて、紀藤弁護士の発言に過失はないと判断。 「信者に対して売春をさせていた」という発言についても、統一協会に関わる過去の民事訴訟の判例を含む多数の資料を弁護側は提出。裁判所は真実性を認めた。
報道の「萎縮効果」を狙った「スラップ訴訟」か
2022年9月、統一教会は今回の紀藤弁護士に対する訴訟と同時に、同じく「ミヤネ屋」に出演した本村健太郎弁護士と読売テレビに対する訴訟、および情報番組「ひるおび」に出演した八代英輝弁護士と制作会社のTBSに対する訴訟を提起している(いずれも名誉毀損の訴え)。 また、同年10月には情報番組「スッキリ」に出演したジャーナリストの有田芳生氏と制作会社の日本テレビに対する名誉毀損訴訟と、「生島ヒロシのおはよう一直線」に出演した紀藤弁護士と制作会社のTBSラジオに対する名誉毀損訴訟も提起した。 しかし、八代弁護士に対する訴訟については2023年6月に東京地裁に棄却され、統一教会側は控訴したが、同年12月に東京高裁によって控訴棄却された。 木村弁護士に対する訴訟は2024年1月、そして有田氏に対する訴訟は今回の判決の前日である3月12日に、東京地裁はいずれも棄却とする判決を出している。進行中の「生島ヒロシのおはよう一直線」に関する訴訟を除けば、統一教会側が「負け続き」となっている状況だ。 会見にて、紀藤弁護士は勝訴したことに安堵(あんど)を示しながらも、統一教会による一連の名誉毀損訴訟は、敗訴になることがわかっていながらもメディアを萎縮させる目的で行われる「スラップ訴訟」であると指摘した。 訴訟が始まってから、メディアは紀藤弁護士の出演を拒むようになったという。前日の会見で有田氏も同様の問題を語っていたことに触れながら、紀藤弁護士は、実際に訴訟が萎縮効果を発揮しているという危惧を示した。