163キロ右腕・佐々木朗希のドラフト1位指名撤退検討球団が続出…理由は未知の怪物ゆえの“あの問題”
東北の地元スターを1位指名する可能性の高い楽天の石井一久GMでさえ、神宮での壮行試合を観戦した後、「日本の宝」と大絶賛しながらも、特別育成プランが必要であることをほのめかしていた。 「即戦力に近い未完の大器だと思う。でも体は高校生だから、すぐに140何試合を戦うプロの世界で投げる体力があるかわからない。佐々木君を指名したら場数を踏ませるプランを作らないといけない。でもファームで使えば成長するというものではない。日ハムのように定期的に上(1軍)に上げた方が早く育つんですけどね」 石井GMが参考に挙げたのは、日ハムがドラフト1位指名した金足農の吉田輝星をキャンプでは2軍スタートさせたものの、6月以降タイミングを見ながら1軍で起用している育成法だ。日ハムは大谷翔平の“二刀流”をも成功させた体験を持つ。 楽天も田中将大という高卒ルーキーを大成功させたが、マー君は、佐々木に比べて体ができていた。一方で、肘に不安を抱えて入団した安樂智大を今なお開花させられていないなど、高卒ルーキーの育成法について確固たるノウハウを見つけ出せてはいない。 日ハム、そして長期型育成に備えた3軍を持つソフトバンク以外の球団のほとんどが、佐々木クラスの怪物の育成経験がない。阪神に至っては、ルーキーイヤーから3年連続2桁勝利をマークした藤浪晋太郎をこの3年間、スランプから脱出させられないままだ。 ドラフト1位を誰にするかは、来年以降のチーム戦力を整えるための重要な球団戦略である。「未完の大器」の佐々木には「入団後の育成プラン」という戦力にするための条件がついてくるのであれば、指名を躊躇してしまう球団が出てくるのも仕方がないだろう。 それよりも育成プランにメドが立つ他の1位指名候補を選択する方が、企業としてのリスクは少ない。星稜高の奥川恭伸や明治大の森下暢仁などの超A級候補もいるのだ。 元ヤクルトの名スカウト、片岡宏雄氏も、「オレがスカウト責任者なら佐々木は怖くていけない。2,3年出てこなくても、どうってことない、というくらい余裕があるチームと、育成に自信のあるところしか指名できないだろうね。巨人や阪神は、育成に失敗した場合に批判を受けるリスクを考えて回避すると思う。そうなると日ハム、ソフトバンク、地元の楽天の3球団に、プラスアルファ、もう1球団くらいじゃないか」と、今秋のドラフトでの佐々木の1位指名を予想している。プロ球団を悩ませるほど、無限の可能性を持つ“令和の怪物”は、今月中にも、その進路を明らかにすることになっている。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)