中国が「原子力発電所」の量産を着々と進めている 国内だけでなく、世界に輸出する野望も進展
脱炭素の推進に向けて、中国が原子力エネルギーの取り組みを強化している。政府の支援を受けた中国の原子力発電技術は、自国のみならず、世界のエネルギー市場を再構築する可能性を持つ。 【画像】中国に登場したアジア初のらせん型エスカレーター パキスタンのカラチ沿岸部に姿を現しつつある原子力発電所。この原子力発電所は、中国の長きにわたる野望の達成を象徴している。これまで半世紀にわたってカナダ製の原子力発電所を運営していきたパキスタンは、中国製の原子力発電を迎え入れることを2023年に最終決定した。 英「フィナンシャル・タイムズ」紙によると、習近平国家主席が2060年までにカーボンニュートラルを達成すると発表して以来、中国では原子力エネルギーを石炭に代わる重要な電力源と位置付けることを明確にしている。 中国の新たな原子力発電所への投資は2023年に131億ドルに達し、過去5年間で最高を記録。2022年に中国の電力供給における原子力エネルギーが占める割合は5%だったが、2035年までに10%、2060年までに18%に達すると予想されている。 実際のところ、2014年に20ギガワット(GW)だった中国の核設備容量は、2023年4月までに倍以上となる53GWに拡大した。世界最大の原子力エネルギーの消費国である米国では、94基の原子炉で94GWを発電しているが、中国は26基の原子炉を建設中で、近く30GWを追加する見通しだ。 この拡大は中国に経済的な利益をもたらす一方で、課題も残す。中国は、ウランの3分の1を国内で、3分の1を中国企業が所有する外国鉱山から、そして残りを海外から調達している。中国はウランの供給で海外にある程度依存しなくてはならない状況を避けたいはずだ。
次世代の核技術では世界をリード
中国の野望は国内にとどまらない。アジア、中東、アフリカなどに核技術を輸出する計画を持っている。政府の支援を受けた中国の原子力発電は、世界のエネルギー市場を再構築する可能性を持つ。 中東メディア「アルジャジーラ」によると、新しい技術を使った次世代の原子炉の開発という点では、米国が中国に10年から15年遅れをとっている。中国は2023年12月に、山東省東部の石島湾で、世界初のいわゆる第四世代原子力発電所を公開した。 中国メディアによると、この発電所の原子炉は、加圧式ではなく、ガスを冷却剤として使用している点で、従来の核技術よりも安全性が高く効率的であるとしている。依然として、世界における米国の原子力エネルギーのシェアは高いものの、逆転するのも時間の問題なのかもしれない。
COURRiER Japon