孤立状態の老人ホーム 寸断された道で93歳母の身案じる男性に会った「全然電話通じん。向こうからなんも言うてこんし生きとるのか」【能登半島地震:取材リポート】
「八幡さんのお母さんはどうされていますか?」
輪島荘で取材を始めた私は、施設の統括主任の北村さんに「八幡さんのお母さんはどうされていますか?」と聞く。すると「元気にされていますよ」との返答。 私は携帯電話で八幡さんに連絡をとり、輪島荘にたどり着いたことを伝えた。そして電話を北村さんに代わった。 北村さん:いつもありがとうございます、北村です。お母さま元気でいらっしゃいますよ。 八幡さん:あー、よかった。 北村さん:寒いわー、とか言ってますけど、ほんとに元気です。 八幡さん:それ聞いてほんと安心した。 北村さん:心配されたと思いますけど、当日はみんなびっくりしたかと思うんですけど、利用者さんみんな一緒に寝ていますので大丈夫です。 八幡さん:連絡も取れなかったので…。 北村さん:こちらからも連絡できなくて申し訳ないです。水も電気も来ていないので電話も無理で。こういった形でお電話いただいたらうれしいです。ありがとうございます。
電話を終えた北村さん「よかったです、伝えられて」
八幡さんのほっとした声が電話の向こうから聞こえた。電話をする北村さんの目から涙がこぼれていた。 輪島荘・北村寿美子さん:「ご家族さん、心配されている方いらっしゃるかと思うんですけど、みなさん元気です。大丈夫です。よかったです、伝えられて」「ありがとうございます、本当に。伝えることができた」 老人ホームは停電がなお続き、水道は通っていない。トイレも大きな課題だという。24人いる高齢者の多くは、体調に大きな変化がないというが、迅速な支援が必要だ。八幡さんが93歳の母親と無事に再会できることを願い、輪島荘を後にした。(MBS報道情報局 気象・災害担当記者 福本晋悟)