専門家が予想する日銀の2024年「マイナス金利解除」のタイミング
アメリカの利下げが3回となると、2024年3月の可能性も ~円高の心配もしなければならなくなる
吉崎)しかし、一方でリスクもあります。先日のFOMCでは、急にハト派になってしまったのですよね。パウエル議長は上手くやっていて、失業率3%台、インフレ率3%で収めているのでOKなのですが、言うことがコロコロ変わるのです。「2024年の利下げは2回程度」と言っていたのに、いつの間にか「利下げは3回」となっています。利下げが3回行われる場合、早ければ2024年3月の可能性もあります。 飯田)3回となると。 吉崎)日本がマイナス金利解除、つまり利上げに動こうとしているとき、先にアメリカに利下げされたら、余計なことを考えなくてはいけなくなります。いままでは円安の心配をしていたけれど、急に円高の心配をする必要があるかも知れない。 飯田)確かに先日のFOMCは、政策は変わらず現状維持でしたが、パウエルさんが「来年(2024年)利下げが3回あるかも知れない」というような発言をした途端、円高に振れましたね。
テレビ東京・大江麻理子キャスターの最高の質問
吉崎)安倍派の問題もその時期に急に動きました。ですので、19日の日銀の会見は、みんな戦々恐々と見守っていたのです。 飯田)植田さんが何を言うのか。 吉崎)私は新幹線で移動中でしたが、ずっと聞いていました。最高の質問をしてくれたのが、テレ東の大江麻理子キャスターです。彼女は毎回出てきて面白い質問をしてくれるのですが、「来年アメリカで利下げがあったら、マイナス金利の解除はやりにくくなるのですか?」というようなことを上手に聞いていました。すると、植田さんが強い言葉で「そういう考えは不適切である」と言ったのです。 飯田)不適切とまで言ったのですか。 吉崎)非常に強く否定したのですが、そのあと「3ヵ月先、6ヵ月先にどうこうみたいなことは考えてはいけない」と、言わなくてもいいことを「ポロッ」と言ったのです。図星を突かれて動揺するような、いわゆる「語るに落ちる」という反応でした。
事前に考えていた植田総裁の「チャレンジング発言」
飯田)そう考えると、アメリカの出方も見なくてはならず、その部分がチャレンジングだったのでしょうか? 吉崎)12月7日の「チャレンジング発言」も前後を聞くと、言わなくてもいいのに最後の方で、野党の質問に挟んでいるのです。どう見ても家を出る前から考えて「これを言ってやろう」というフレーズです。もちろん日銀としては選択肢を広げたいので、「1月もある、4月もある」という状態にしたいのですけれど。