県立高校の部活顧問が“丸刈り”強要で物議…教師の指導が「違法」と判断される基準とは
教師の指導が許容される“限度”
学校教育法には以下の規定がある。 ■ 学校教育法11条 校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。 教師の生徒に対する指導(懲戒)が違法か合法かを判断するにあたって、裁判所では一般的に▽その指導に客観的な合理性・相当性があるか▽指導者としての裁量の範囲を逸脱していないかの2点について審理される。 丸刈りの強要についてこれらを検討した場合、違法になる可能性が極めて高いだろう。教師が生徒に丸刈りを強要する合理性は見当たらず、指導者としての指導の範囲を逸脱していることは明らかだからだ。教師が自らの手で生徒を丸刈りにすることはもちろん、「丸刈りにしてこい」と命じることも違法になると考えられる。
上司が部下に“丸刈り”を強要したら?
では、丸刈りの強要が学校ではなく「会社」で行われた場合はどうなるのか。実際に起きた事件を参考にする。 ある会社で、部下の帰社が遅れたことに立腹した上司が“制裁”として、部下の頭頂部と前髪を刈って落武者風の髪型にし、頭を洗車用スポンジで洗い、最終的に丸刈りにした。さらに別の従業員がその部下を下着姿にして、洗車用の高圧洗浄機を至近距離から噴射。洗車用ブラシで身体を洗うなどしたが、上司はその場で黙認していた。この一連のイジメ等について、裁判所は慰謝料100万円の支払いを命じている。(福岡地裁 H30.9.14) 仮に丸刈りにしただけだったとしても、多少の減額こそあれ、慰謝料は発生していただろう。 また丸刈りまでいかなくとも、上司が部下の髪に整髪料をつけて強制的に髪型を変えたことに対し、慰謝料が認められた事件もある。その回数は8回にも及び、裁判所は「上司の行為は部下に屈辱感を与え、その人格的利益を侵害することは明らか」として慰謝料25万円の支払いを命じた。(水戸地裁 R5.4.14)