「極めて厳しい状況」パチンコホール、負担是正を求め“公取・警察庁・販社・メーカー”に訴え
録音データの提出、違反の事実認定には有効も…
また、全日遊連による音声データの収集と提出は、公正取引委員会において独占禁止法違反行為があったと認めてもらうのに、どの程度効果を発揮するのだろうか。 「公正取引委員会が指定している『不公正な取引方法』の中には、すべての業種に適用される『一般指定』というものがあります。 抱き合わせ販売で言えば『購入させる』ことと、『取引するように強制する』ことがこれにあたるとされているため、具体的な取引の方法がこれらに該当する行為だったのかということが重要になります。 契約時の音声データには、どのようなやりとりがあったかが当然含まれているはず。よって、そのやりとりが抱き合わせ販売に当たるものだった場合、実際にその内容の契約が締結されていたということであれば、独占禁止法に違反する取引があったという事実の認定には有効であると思います」(三島弁護士) ただ、遊技機の「不適切な販売方法」が独占禁止法に違反するものであると認められたとしても、ホールが損害を回復できるとは限らない。 独占禁止法に違反する取引があったという事実が認定されたとしても、損害賠償請求が認められるには、独占禁止法に違反した特定の不法行為によって、特定の損害が生じたという法的な因果関係が認められる必要がある。 しかし三島弁護士によると、「契約時のやりとりの音声データが、独禁法違反行為と特定の損害との間の因果関係を証明するのに、大いに役立つという状況はあまり想定できない」とのことだ。
ホール側は警察庁にも報告「『まとまり』乱すことにならないか危惧」
損害賠償請求が認められるまでには高いハードルがありそうだが、全日遊連側は引き続き販売方法の是正を求めている。 『P シン・エヴァンゲリオンX』の「不適切な販売方法」をまとめた全日遊連の文書に対し、フィールズ側は文書で「該当する事実は無い」と回答。 これに対し、全日遊連は多くのホールから声があがっていることを理由に「到底看過できない」として、フィールズでどのような調査が行われたのかの詳細について回答を求めたうえで、一連の経緯を警察庁に報告したことを明らかにした。 公正取引委員会のみならず、警察庁にも経緯を報告した理由について、全日遊連は警察庁が「業界のまとまり」を重要視していることをあげた。 コロナ禍の最中、パチンコ業界は射幸性の高い古い遊技機を撤去し、新しい規則にのっとった遊技機と入れ替えるという対応に追われていた。 この際、パチンコホールや販売会社、メーカー等がまとまりをもって入れ替えを進めたことを警察庁が評価。生活安全局保安課の小堀龍一郎課長(当時)は2022年の講話で「今後も業界内の課題は業界内でまとまって対応することを期待する」旨を述べている。 こうした背景を踏まえ、全日遊連は「フィールズ社の販売方法がこの『業界のまとまり』を乱すことにならないかを危惧した」という。 全日遊連では他にも、パチンコ台『e Re:ゼロから始める異世界生活 season2 M13』のメーカー・大都技研に対し、 ・同機種の再販価格が当初より大幅に値上げされており、多数のホールから是正を求める声があがっている ・大都技研は同機種の再販価格の要因の一つに、中古市場での取引価格をあげているものの、中古市場での取引価格を理由にした価格設定は合理的ではない ・大都技研のグループ会社が製造した遊技機の中には、中古市場で安値で取引され、販売価格に見合わなかった機種もあり、こうした機種を購入したホールに対してはどのように配慮するのか と、ホールの声や疑問を記した文書を送付している。