【紅麹被害】尿が泡立ち刺すような痛み…小林製薬の創業家エリート社長「本誌直撃に不敵な笑み」の真意
3月29日、大阪市内で小林製薬による緊急記者会見が開かれていた。4時間半に及ぶ会見を終え、記者団も引き上げた夜8時頃、会見場から一人の男性が姿を現した。小林製薬の小林章浩社長(52)だ。 【画像】株主総会では涙を流し…直撃すると不敵な笑みをみせた 小林製薬・小林章浩社長 社員に警備されながら、送迎車へ向かっていく。その表情は、大企業のトップとは思えないほど弱々しく見えたが――。 小林製薬が販売した『紅麹(べにこうじ)コレステヘルプ』などの紅麹を使用した機能性表示食品を巡り、健康被害が拡大している。4月2日時点で、摂取者のうち5人が死亡し、157人が入院。さらに台湾でも6人が腎機能の異常を訴えているという。 原因の一つとみられるのが、青カビ由来のプベルル酸だ。関西学院大学生命環境学部の藤原伸介教授が解説する。 「プベルル酸はマラリアの生育を抑える性質のある物質です。腎毒性を有しているかは明らかになっていません。また、青カビの代謝で生成されたプベルル酸以外の物質が原因の可能性も残っています。 紅麹カビの培地で青カビが優位に繁殖するのは難しい。また紅麹カビの中には、プベルル酸を作る遺伝子は恐らくない。つまり、培養器に青カビが混入したと考えるのが妥当でしょう。小林製薬も管理は徹底していたでしょうが、培養器の温度や湿度、酸度などの制御に問題があった可能性はあります」 ◆一族経営の弊害 紅麹を含む健康食品を摂取した人の中には、尿がコーラのように泡立つ、黒茶色になる、下腹部に刺すような痛みを感じるなどさまざまな症状が報告されている。取材に応じた60代男性は「使用した人にしか、この恐怖はわからない」とやり切れない思いを口にした。 摂取者から悲痛な叫びが上がるなか、小林章浩社長は対応に奔走している。すでに2回の記者会見を開き、さらに3月28日に行った株主総会では涙を流して謝罪を行ったという。 「創業家6代目の小林社長は慶應義塾中等部に進学し、そのまま慶應大学経済学部を卒業。花王に4年間勤務したのち、’98年に小林製薬に入社しました。’13年には弱冠42歳で社長になったエリートです。『ユーレット』(企業価値検索サービス)が昨年発表した長者番付では27位に入り、保有資産は推定1215億円だそうです」(経済誌記者) 一方で、”創業家の跡継ぎ”という立場が問題を複雑化した可能性もある。 「父である一雅会長(85)の影響力はいまだに健在で、業界内では章浩社長のことを『お飾り社長』と揶揄(やゆ)する関係者もいます。年上の古参幹部も多く、重鎮たちからは今でも”ぼっちゃま扱い”されている。自分の意見を通しづらい部分もあったんだと思います」(製薬会社関係者) 実際に、1月15日に小林製薬に健康被害が疑われる最初の報告があってから、3月22日に自主回収に踏み切るまで2ヵ月以上かかっている。行政への情報提供もなかったため、武見敬三厚労相は「遺憾と言わざるをえない」と厳しい姿勢を示した。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は言う。 「因果関係がわからなかったとはいえ、危機管理については大失敗でした。サプリは基本的に毎日使うものですが、その頻度の高さから毒性が分解されず蓄積した可能性もある。使用基準に問題がなかったも検証が必要かもしれません」 問題の責任についてどう考えているのか。冒頭のように会見場から出てきた小林社長を直撃した。 ――すみません、一言だけいいでしょうか。 「…………」 こちらの呼びかけに一切反応しない。表情からは疲労感が滲んでいる。 しかし記者の横を通りすぎる時、頬が大きく吊り上がった。一瞬だったが、はっきりと笑みを浮かべた小林社長(上写真)。その表情は単に頬が強張っただけなのか、それとも別の真意があったのか……。そのまま一言も発することなく送迎車に乗り込むと、会場を後にした。 実家であり、小林一雅会長が暮らす兵庫県芦屋市の大豪邸にも何度も足を運んだが、インターホン越しに女性の声で「今日は戻りません」と答えるだけだった。 閉鎖的な社風に不透明な管理状況と、検証すべき課題は山積みだ。健康サプリによって何人もの犠牲者が出た。ワンマン創業家の責任はあまりに重い。 『FRIDAY』2024年4月19日号より
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