『デッドプール&ウルヴァリン』をネタバレなしでレビュー 最大の魅力は同窓会的な楽しさ
『X-MEN』シリーズのMCUへの本格合流の布石となるウルヴァリンの復活
今回の主人公であるウルヴァリンも、いわばそういうキャラの1人だと言っていいだろう。ウルヴァリンは大人気ヒーローだが、彼ほど酷使されたヒーローもなかなかいない。映画版での初登場は『X-メン』(2000年)。そこから3作続けてシリーズに出たあとは、演じるヒュー・ジャックマンが売れっ子になったこともあり『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009年)で単独主演シリーズがスタート。生身のヤクザと走る新幹線の上で戦う『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年)では、ある意味で日本中のファンの度肝を抜いた。一方で『X-MEN』シリーズが傑作『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年)で大幅な仕切り直しを行い、その後のシリーズ『X-MEN:フューチャー&パスト』(2016年)にも主演。入り乱れた時間軸の中で、ウルヴァリンは活躍を続け、これまた傑作『LOGAN/ローガン』(2017年)で、その戦いの人生に幕を閉じた。約20年に渡って同じ俳優が1人の役を演じ続けるのは珍しいが、同時にそれは、20年に渡っていろいろな商業的な事情に翻弄され続けたことも意味する。そして今回の復活も、「『X-MEN』シリーズのMCUへの本格合流の布石」という商業的な意図があると言っていいだろう。 本作に登場するのは、ウルヴァリン同様、いろいろな「都合」に翻弄されたキャラクターたちだ。そして本作はフィクションとして消費される運命にあるキャラたちが、「なかったこと」にされないために戦う物語である。それを率いるのが、自分はフィクションのキャラだと把握していて、キャラクタービジネスを巡る物語の「外」のあれこれをメタ的に皮肉りながらも、物語の「中」で正義のために戦うデッドプールである点が心憎い。 もちろん、同窓会に興味がない人でも、本作は楽しめるはずだ。R指定なので、アクションにもギャグにもまったく遠慮がない。血もバンバン出るし、首もポンポン飛ぶ。そういうのが苦手な方にはオススメできないが、アクションもギャグの切れ味も、シリーズでは最高峰のように思えた。不死身のデッドプールとウルヴァリンの、いくら殺しても死なない血みどろの戦いも、じゃれ合いのようで観ていて楽しい。 とはいえ、本作の最大の魅力は……やはり同窓会的な側面だろう。「元気そうなあいつが観れて良かった」という再会の喜びと、「どこかで明日も明後日も、この調子で元気にやっていくんだろうな」という気持ちの良い別れ。この感じ、まさに同窓会である。1990年代から2000年代に、アメコミ映画を追っていたすべての人にとって、本作は楽しい同窓会映画の決定版となるはずだ(同窓会、俺は呼ばれたことないけど)。
加藤よしき