中島健人が語る映画文化と旅。パワーアップした「映画の旅人」で思うこと「未来への布石となる番組」
WOWOWで2021年1月の放送開始以来、3年にわたり中島健人がMCを務めてきた映画情報番組「中島健人の今、映画について知りたいコト。」が、2024年7月からパワーアップ。『中島健人 映画の旅人』として新たに旅の要素が加わり、世界中の映画人と交流しながら、映画というカルチャーを深堀りしていく。 【写真を見る】「中島健人 映画の旅人」第2回「インド・ムンバイ/インド映画流ダンスの世界」より 今回は、ここまでインドやタイなどを巡ってきた中島にインタビューを実施。これまでの旅で思い出に残っていることや番組の意義についても話を聞いた。 ――今年から番組がリニューアルしました。新たに旅という要素が加わりましたね 「国内だけではなく、いろいろな国々を巡りながら映画文化をお届けする番組は珍しいと思います。しかも、これほど深堀りしている映画番組は少ない。映画+外国を巡るという、僕の好きなことを番組を通してできることがすごく嬉しいです」 ――前身の番組も含め、すでに様々な国々を巡ってきましたが、まずはインドで驚いたことを教えてください 「ダンスカルチャーが映画の中に標準装備されていることですね。日本では劇中にダンスシーンを入れると、ミュージカル仕様になると思うんですけど、インドではスタンダードなんです。しかも振付師の地位がすごく高い。映画製作においても監督やプロデューサーと渡り合える、そういうレベルで振付師の方が存在していてカルチャーショックでした。現地で監督や振付師の方と話して、常識が国々によっていかに違うかが感じ取れましたね」 ――タイ編が12月1日から配信開始になります。タイで印象に残った食べ物などありますか? 「『ロティサイマイ』というお菓子ですね。綿菓子をクレープに包んで食べるというものなんですけど、日本の方も好きなんじゃないかな。縁日でアニメなどの絵柄の袋で包まれた綿菓子がたくさん並んでいるじゃないですか。タイのものは透明の袋に入っているんですが綿菓子自体にピンクや緑といった色がついていて、彩り豊かで、しかもそれをクレープに包んで食べるという面白さがあります。初めて食べたので"食のカルチャーショック"でした。また、ゾウに乗るのは人生初体験だったので、童心をくすぐられましたね」 ――タイでは、日本でもブレイク中の人気若手俳優アップ(プーンバット・イアン=サマン)さんとも同世代映画トークをしたそうですね 「今まで大先輩たちへのインタビューが多かったので初めての同世代対談でした。共通の好きなアニメもあって、『遊戯王』や『NARUTO-ナルト-』、『ONE PIECE』などの話で盛り上がり、特にアップ君は『推しの子』が好きみたいで!『僕が『GEMN』としてアニメ版の主題歌を歌っているんだよ』と言ったら知ってくれていましたね。『推しの子』は日本の芸能界の構造を表現しているところが、タイでもすごく共感されていると言っていました」 ――番組の中で世界各地を巡っていますが、ロケ中に意識していることはありますか? 「何も意識していないかも。自然体ですかね。素で楽しむことかな。あとは、できるだけ旅先の人と友達になるというのは意識しています」 ――では、番組をやっていて良かったと思う瞬間はありますか? 「制作者の熱量をじかに感じることができるという点ですね。その国の映画界の頂点を極めた方に会えるわけですから。バンジョン(・ピサンタナクーン)監督というタイのNo.1興行収入である映画『愛しのゴースト』を撮った監督と対談できたんですけど、そういう機会ってタイの役者さんでもあまりないのではと思います。日本人の僕が大使のように対談することが刺激的だし、何かしら未来につながることになっているんじゃないかな」 ――そうした刺激を受け、自分の作品で何か還元しようと思っていることはありますか? 「やっぱりできるだけ自然体ってことですかね。4年前にクリストファー・ノーラン監督にリモートでインタビューする機会がありました。その時に『僕にピッタリの役はなんでしょうか』と聞いたら『インタビュアーの役』って言われたんですよ。それじゃだめだなと思う。もっと様々な役を演じることができる俳優として見てもらえるように、頑張らなきゃいけないなと思いました」 ――具体的にすでに行っていることはありますか? 「できるだけ自分のパーソナリティをさらけ出すようにしています。今は『GEMN』としての名刺を持っていて、会う監督にお渡ししていますね。僕は大変ありがたいことに映画では主演として出演することが多いのですが、世界の監督に『あの映画見たよ』と言われるようになりたい、そのような映画に関わりたいというモチベーションがかなり上がりました。そういった意味で、未来への布石となる番組になっているんだなと思いますね」 ――海外の映画関係者とお話する機会が多いと思います。海外の方から見た日本映画の印象などで記憶に残っていることはありますか? 「やっぱり是枝裕和監督とか黒澤明監督の名前はよく出てきます。気付いたのは、海外で好まれる日本映画っていい意味で静かで、心の機微を丁寧に表現した作品が多いのかなと。そういう発見がありましたね」 ――なるほど。改めて、中島さんは日本映画に対してどう考えていますか? 「まだ答えが出せないというか、わからないですね。今、世界で大ヒットしている『SHOGUN 将軍』は静かというわけではないじゃないですか。ああいった日本を舞台にしたスペクタクルなドラマが評価されているというのは嬉しくて、映画もそうなればいいなと思います。エンタメ性に富んだ映画も日本の良さとして多くの方に認識されてほしいですね」 ――インドで活躍する日本人の撮影監督・中原圭子さんともお話する機会がありましたよね 「僕にとってとても大きな出会いでした。異国の地で周りにとても尊敬されている中原さんがとてもかっこよくて。そういうのを見ると、日本人の可能性ってまだまだあるし、例えば坂口健太郎くんが韓国のドラマに出ていますよね。日本人が異国の地で個性を発揮していく時代になったらいいなと思いましたし、日本とタイや日本とインドで共同制作する作品もできたら、僕の旅の意味があるなと感じましたね」 ――最後に、どのようにこの番組を見てほしいと思いますか? 「自分と一緒に旅をしている感じになってくれたらいいなと思います。僕みたいな俳優やアイドルの活動もしている人間が、WOWOWで映画をテーマにして旅をしているというのは異種だと思う。WOWOWの中の"ソフトスポット"として(笑)楽しんでくれたら嬉しいです」 取材・文=まっつ
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