なぜ電気自動車は高い? 安くすることはできないのか 専門家に聞いてみた
メーカーも利益出せない
EV(電気自動車)の購入をためらっている人、あるいは購入をまったく考えていない人に、その理由を尋ねたとき、予想される答えの1つは販売価格の高さだ。 【写真】世界の電動化をリードしたパイオニア【日産リーフ(2代目)を写真でじっくり見る】 (20枚) ほぼ例外なく、EVはエンジン車よりもかなり高価であり(特に航続距離が400km以上のEVの場合)、多くの人にとって気軽に手を出せる買い物ではない。では、より多くの人がEVを購入できるようにするには何が必要なのだろうか? そもそも、そんなことは可能なのだろうか? 商品の値段について知るためには、まずそれを作るのにいくらかかるのかを知る必要がある。日産自動車のCOO(最高執行責任者)で、初代リーフの市場投入を指揮し、同社のEVおよびバッテリー事業の責任者を務めたアンディ・パーマー氏は次のように語る。 「発売時点で、販売原価はメーカー希望小売価格よりも高かった。つまり、単に諸経費を賄えていなかっただけではありません。材料費すらカバーできていなかったのです」 当時、日産がリーフをロスリーダー方式(採算度外視で安い価格を設定すること)で発売したのは、トヨタがハイブリッド車の初代プリウスを発売したときと同じような戦略的決断だった。 しかし、EVはハイブリッド車よりもはるかに大きなバッテリーを搭載しているため、価格に対する影響力も大きい。「当時は容量1kWhあたり1000ドルほどだったバッテリーは、今では150ドルほどにまで下がっています」とパーマー氏。 「あるEVで、60kWhのバッテリーが必要だと仮定すると、バッテリーパックだけで9000ドルかかることになります。これにメーカーの諸経費と15%の販売店マージンを加えると、コストは約4万1500ドル(約620万円)に跳ね上がる」 「そのため、1kWhあたり1000ドルから150ドルへと10年カーブを下った後でも、メーカーには利益がないのです」 パーマー氏は、このコストは今後も下がり続け、一般的なバッテリーの場合、1kWhあたり80ドル程度まで下がる可能性があると見ている。だが、下落のスピードは鈍化しており、あと2~3年で実現するようなものではない。