リンゴ県内随一の産地、継承へ模索 朝日・後継者いない生産者の樹園地情報公開
リンゴの収穫時期を迎えた県内随一の産地・朝日町で、後継者がいない生産者の樹園地情報を町ホームページ(HP)に公開し、継承希望者とつなげる取り組みが始まった。同町のリンゴ生産者は2020年までの15年間で4割近く減り、また作り手の約7割で後継者がいない厳しい状況。「自分一人では後継者を見つけられない」と生産者は話す。関係者は危機感を持ち産地存続を模索している。 町内のリンゴ栽培は1887(明治20)年ごろに始まり、基幹産業となった。「無袋ふじ」など多様な種類が生産され、町内にある道の駅あさひまち「りんごの森」は、シーズンになると町内産を求める多くの買い物客が訪れる。だが作り手の減少は深刻だ。町内経営体数は2005年の427から20年は270まで減った。22年のアンケートでは、生産者の約7割が「後継者がいない」と答えた。 HPを使うマッチングに取り組むのは、町や生産者団体、JAさがえ西村山などで構成する「あさひりんごの郷(さと)協議会」。同協議会によると、生産者は高齢や病気で働けなくなり引退する例が多い。手をかけない樹園地は病害虫が増える危険性があり、伐採せざるを得ない。こうして優良な園地が減少しているという。
1.5ヘクタールで生産するリンゴ農家の清野忠市さん(76)=古槙=は後継者がいないという。大きく赤くなった実を見て「半世紀以上大事に育ててきた木を切りたくない。古いと100年近い木もある。その命をつなぎたい」と話す。 町内ではベテランが知識などを伝える塾開催、リンゴ栽培を行う地域おこし協力隊募集なども行われている。同協議会は、より門戸を広げて関心を高めようとHPを使うことにした。生産者が樹園地の所在地、面積、継承希望時期などを記載し申請する。HPではこれらと地図を見ることができ、継承希望者は同協議会を通じ所有者と話し合う。10月25日に運用を始めた。 HPは今月7日時点で3件の登録があるという。同協議会の海野淳事務局長は「リンゴ園地の減少は町の未来を左右する」と強い危機感をにじませる。登録3件のうち、1件で交渉が進んでいる。