<映画評>小松菜奈の天使っぷり 非道な役所広司の演技も注目『渇き。』
登場人物のほとんどすべてが“悪事”を犯す映画は他にないのでは、ないだろうか。失踪した娘を必死で探す主人公の元刑事の藤島(役所広司)は、正義感に溢れているかと思いきや、その破天荒ぶりは半端ではない。数々の非道なやり口には、あっけにとられてしまう。失踪した娘、加奈子(小松菜奈)は容姿端麗な優等生なはずだが、その天使っぷりも見事だが、つかみ所のない悪魔の要素もふんだんに入っている。中心人物が悪役的様子をみせれば、脇を固める登場人物もとにかく、どこかで悪役を演じている。作品を見終わったあとは、なんとも言えない気分に陥ってしまう。 一方で、「告白」で映画賞を総なめにした中島哲也監督が指揮を執っただけあり、最高のエンターテインメントとなっている。次から次に起こる事件。明かされる真実。加奈子を取り巻く謎めいた状況は、観客をスクリーンへと引き込んでいく。人としても非道で“最低の父親”を演じた役所広司も迫力は、とにかくすごい。暑苦しさ、図太さ、陰湿さ、ネガティブな言葉のほぼ全てが当てはまる主人公を堂々と演じている。加奈子役の新人・小松菜奈も初々しさも、この作品の魅力の1つ。作品の中で表現される加奈子は、ピュアな少女そのもの。その無邪気な笑顔の奥にはどんな思いが隠されているのか…。 ストーリーは、失踪した娘・加奈子を探すため、元刑事の藤島がさまざまな犯罪と遭遇しながら、謎を暴いていくサスペンス。加奈子を取り巻くさまざまな人間関係は複雑ながらも個性豊かなだけに、混乱することなく把握していくことができる。さまざまな伏線を1つ1つ解きほぐせば、衝撃的な真実が見えてくる。 ■公開情報 『渇き。』 出演:役所広司 小松菜奈 監督:中島哲也 脚本:中島哲也 門間宣裕 唯野未歩子 原作:深町秋生 「果てしなき渇き」(宝島社刊) 配給:ギャガ 6月27日(金)全国ロードショー (C)2014「渇き。」製作委員会