「態度が悪い」「料理がまずい」…サービス業の従業員に「ブチギレ」する人が「考えていること」
根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち4刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。 【写真】知ったら全員驚愕…職場をダメにする人の「ヤバい実態」
「自分もされたのだからやってもいい」と正当化
職場で「置き換え」による八つ当たりの連鎖が起きると、強いストレスがかかり、怒りや欲求不満が溜まるので、どこかで鬱憤晴らしをしなければ心身に不調をきたしかねない。そこで、矛先を変えて、当たり散らせる相手を外部に探し求める。現在その矛先を向けられている最大の被害者といえばホテルやレストラン、スーパーやコンビニなどのサービス業の従業員である。 「態度が悪い」「口のきき方がなってない」「料理がまずい」「不良品が混じっている」などと難癖をつけて激高し、怒鳴りつける。ときには、「土下座しろ」と要求したり、暴力を振るったりすることもあり、逮捕者が出たことさえある。このような暴言や暴力は、“カスタマーハラスメント”、いわゆる“カスハラ”と呼ばれており、メディアでもしばしば取り上げられている。 サービス業の従業員が“カスハラ”のターゲットになりやすいのは、やはり言い返せない立場だからだろう。「お客様は神様です」という言葉に象徴されるように、わが国では「お客様」の要求にできるだけ応えなければならず、逆らうなんてもってのほかという風潮が強いように見受けられる。 そこにつけ込んで、職場で溜め込んだ鬱憤を晴らす格好の機会とばかりに、些細なことで切れて暴言を吐いたり理不尽な要求をしたりする「お客様」が少なくない。そういう「お客様」は、「こちらはお金を払っている客なのだから、少々のことは許されて当然」という特権意識を抱いていることもある。 この手の「お客様」は、“カスハラ”を二重の理屈で正当化する。一つは、従業員の側に手落ちがあったのだから、自分はむしろ被害者という論理である。たとえ、あら探しに近いことをして何らかの落ち度を見つけたとしても、悪いのは従業員の側という理屈で自分のふるまいを正当化する。 もう一つは、自分も職場で理不尽な理由で怒鳴りつけられたが、言い返せず、悔しい思いをしたのだから、同じことをやってもいいという理屈である。「自分もされたのだから、やってもいい」と正当化すれば、罪悪感も羞恥心も覚えずにすむ。こうして「置き換え」による八つ当たりの連鎖が無限に続くことになる。
片田 珠美(精神科医)