花粉症が市街地で多いのはなぜ? PM2.5以上に厄介な原因物質も
PM2.5より小さな物質「オービクル」
花粉症を引き起こす原因物質(アレルゲン)も十数種類ある。とくにスギ花粉症では「Cry j 1」(クリ・ジェイ・ワン)と「Cry j 2」(クリ・ジェイ・ツー)という2つが主要な原因物質だ。これらはスギの学名「クリプトメリア・ジャポニカ」から名付けられたタンパク質だ。 近年の研究で、スギ花粉の外皮に付着する多くの微粒子(オービクル)と外皮の外壁部分にCry j 1が局在し、花粉の内膜や中身のデンプン粒にはCry j 2が局在していることが分かった。スギ花粉の直径は約30マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ、ミクロン)、オービクルの大きさは直径0.5~1マイクロメートル。 花粉の外側の殻(外皮)は酸性に強く、アルカリ性には弱い。そのため花粉が食道から胃に入るとほとんど消化されないが、鼻水とくにアレルギー性鼻炎の人の鼻水はアルカリ性であるため、花粉がこれに触れると外皮が破れ、中身が放出される。この中身のCry j 2が人体に悪さをする。さらに小さなオービクルは、簡単に花粉の外皮から取れてしまうので、これまた厄介だ。
市街地で患者が多い理由は
というのも、直径の大きなスギ花粉本体が鼻腔を通過して肺の奥に入る確率は極めて小さいが、それより小さなオービクルならば肺の奥深くまで入り込める。従来からスギ花粉が飛ぶ時期にぜん息が悪化することは知られていたが、その原因がオービクルにあるらしいのだ。 このオービクルの大きさは、大気汚染物質として最近問題化している微小粒子状物質PM2.5(直径2.5マイクロメートル以下)よりも小さい。空気中を飛んでいる花粉からはずれると、落下しないで空中を漂ったままだ。花粉本体も土の上に落下するならすぐに埋まっていくが、アスファルトの上では何度も車や人などに踏まれるうちに粉砕され、だんだん小さくなって、何度も舞い上げられたりしている。花粉症の患者が市街地で多いのも、これが理由の1つではないかという。 花粉にはほかに工場から出る大気汚染物質や黄砂なども付着し、これらの“複合汚染”が花粉症や呼吸器系疾患などの原因となって、人間の健康に悪影響を及ぼしている。マスクやメガネなどのさまざまな花粉症対策グッズも今や、花粉よりもはるかに小さな“ミクロン”レベルでの対応が迫られている。 (文責/企画NONO)