良き父のもう一つの顔が実は… ジョシュ・ハートネットが「トラップ」出演を決めた理由「危険なものを表現したい、演じたい」
「シックス・センス」「オールド」で知られるM・ナイト・シャマラン監督の最新作「トラップ」(10月25日公開)。「パール・ハーバー」「ブラックホーク・ダウン」などで知られ、本作の主演を務めるジョシュ・ハートネットのインタビューが公開され、出演を決めた理由やシャマラン監督とのタッグについて語っている。 【動画】「トラップ」日本版予告編 溺愛する娘と世界的アーティストのアリーナライブを楽しむ家族思いの父・クーパーのもうひとつの顔……それは、指名手配中のサイコな切り裂き魔だった。そして、この巨大ライブこそ、彼を捕まえるため仕組まれた前代未聞の“罠(トラップ)”。トラップに隠された衝撃の真実とは? 予測不能の騙し合いサスペンスが描かれていく。 ■M・ナイト・シャマラン監督の集大成「トラップ」が描くこと ハートネットが演じるのは、良き父とサイコな切り裂き魔という二つの顔を持つクーパー。シャマラン監督は「クーパーのような特別な役を演じるには、すべてを受け入れ、リスクを取って全力で勝負する準備ができている俳優が必要だった」と指摘する。 クーパーを演じることは俳優にとってもリスキーなこと。ハートネットは「最初に脚本を読んだのは監督と会う直前で、彼のアプローチを事前に、ある程度は理解していた。脚本には、壮大で、奇想天外で、珍しい要素がたくさんあり、中にはとてもダークな部分もある」と、役柄だけではなく巨大ライブ会場に仕掛けられた罠と複雑な要素が盛り込まれた脚本に驚いたそう。「でも、シャマランならすべてをまとめ上げ、全体として驚きに満ちた作品に仕上げてくれると思った」と、監督とのミーティングを重ねて本作の真のテーマを見極めていった。 「脚本から浮揚感と軽快なトーンを読み取って、このキャラクターが置かれている状況を理解しようとした。でも実は、この映画の核心は、父と娘の愛の物語であり、お互いがお互いをどれほど大切に思っているかという物語だと思う。娘の好きなアーティストのライブを観に行く。そしてそれは、邪悪で、奇想天外なものへと展開していく」 ■鬼才監督であり映画界のイノベーターであるシャマランとは? ハートネットとシャマランの最初の出会いは、2004年公開の「ヴィレッジ」のプレミア上映の時だった。 「みんなでディナーに行き、シャマランと私たちは1時間ほど話をした。彼は最高にいい人だ。人間として素晴らしく、明らかに才能あふれる映画監督だ。でもそれ以来、一度も彼と会っていなかった」と振り返り、本作の企画が動き始めて再会を果たすことになった。 「彼が手がけた作品はすべて観てきた。彼は現代の映画界で、本当に独創的な映画製作者の一人であり、優れたコンセプトと卓越した技術で作品を作り続けている。そして観客を映画館に呼び込むこともできる。それができる人はめったにいない」と、観客を未知の領域へと誘い、異なるテーマや演出を駆使したマジカルな演出で観客を魅了し続けているシャマランを賞賛する。 「彼はまた、独自の視点を持っている。シャマランのような監督はほかにいないし、尊敬すべき監督だ。この映画界で独自のスタイルを確立して、業界に非常に大きく貢献している。それでもなお、彼は常に自分独自の何かを探求し続けている」と、常に貪欲な探究心で挑戦し続けるイノベーターだと敬意を表している。 ■良き父であり、切り裂き魔……クーパーとはどんな人物なのか? 自身が演じた クーパーについては「職業は消防士で、家庭での責任や社会での役割以外にもいろいろなことを抱えている。彼は父親であり、娘をとても愛している」と良き父親としてどこにでもいる人物だと説明。だが、クーパーがもう一つの顔になると世界が一転する。 「この映画のタイトルが示すように、彼はかなり厄介な状況に陥っている。私の仕事は、彼の頭の中に入り込み、彼の視点からすべてを感じ取ることだ。たとえ彼が救いようのない人間だったとしても、彼に好意的な解釈をしないといけない」と、良き父でありながらサイコな切り裂き魔でもあるキャラクーの二面性を掘り下げていった。 クーパーは、凶悪な犯罪者かもしれない。「でも私は、彼をそういう風には見ていない。最終的には彼を理解し、ある程度は彼を好きになるしかない。そういうプロセスを辿ったんだ。リサーチして、こういう人についての本をたくさん読んで、なぜこういう人になるのか、できるだけ理解しようとした。そしてスクリーン上では、ダイナミックで、おもしろいキャラクターになるように演じた」と、クーパーという存在を突き放すことなく真摯な役作りを進めて現場に臨んだ。 ■“クーバーの視点”によって炸裂するシャマラン・マジック 国際的アーティストのライブを楽しむ父と娘の和やかな光景は、クーパーが会場に仕掛けられた罠に気づいた瞬間にガラリと変わる。クーパーを捕まえるために、通路には監視カメラが設置され、FBIのプロファイラーの指揮の下、300人を超える武装警官が配置される。巨大アリーナが自分に対する罠だと気づいたクーパーがトラップから抜け出そうと行動を開始すると、切り裂き魔の主観で物語が進行し、観客をも”逃げ場ゼロ”の極限へと追い込んでいく。 シャマランが多層に仕掛けた罠(トラップ)による挑戦的な試みは、ハートネットにとってもやりがいのあることだった。 「この映画はクーパーの視点を中心に作られていて、この人物のコンセプトはシャマランが執念を持って探求したものだ。だからクーパーをできるだけ魅力的に、奥深いキャラクターにしなければならなかった」と入念に準備して臨んだ。 「演じるのはとても難しいが、おもしろいキャラクターだ。描き方が一方に偏ってしまうと、観客からの好意を失いかねないし、あるいは、危険な緊張感を失いかねない。本当に綱渡りのような繊細なバランス感覚での演技が必要だった」と、細心の注意を払って演技をする必要があったという。 ■完璧を目指すシャマラン監督の映画作り 2人の共通点は? 監督、俳優として「私たち2人は、クーパーのようなキャラクターについて似たような感性を持っている。とても危険なものを表現したい、演じたいという欲求と感覚を持っているからだ。『よし、それでやってみよう!』という感じで挑戦したよ」と、シャマランとの共通点を語るハートネット。この感受性を共有して、二人三脚での撮影に挑んだ。 最後に、シャマラン監督の映画作りについて「私がこれまで一緒に仕事をした誰よりも徹底して準備をする。彼は毎日、必要なショットを正確に把握している。撮影の前に映画全部の撮影プランを書き、絵コンテを描いている。私は映画の基本になるシーンの絵コンテの束を渡された。それをめくると、すべてのショットが描いてある。あれだけ完璧に準備をして撮影現場に来て、実際にそのプランのとおりにやり抜くことができる監督はめったにいない」と証言。 続けて、「彼はカメラの後ろに立ち、作品の世界を完全に体験しようとする。そして、観客にどんな映画体験をもたらすのかを見ようとしているんだ。その後、彼はその映像を最も効果的に観客に届くように編集する。彼はその技術の達人だ。そういう映画制作のプロセスを本当に楽しんでいるのだと思う」と、完璧を目指して進化を続けるシャマラン映画に隠された秘密を明かしてくれた。 「トラップ」は10月25日公開。