吉沢亮の逆さ吊りシーンに予想外の苦戦 『バババ』実写化の裏側
井上は、「2022年の秋ぐらいに秋田書店さんに問い合わせをしたところ、その後に松竹さんが同じ原作を取りに行っていることがわかったので、じゃあ一緒にやりましょうということになったのが2022年の12月末。2023年の1月に秋田書店さんから2社で映画をよろしくお願いしますとご返答いただいて、それから1年半かけて撮影まで準備してきました」と続ける。
脚本づくりにおいて重要だったのは、井上いわく「2時間の映画の中でどう起承転結つけるか」ということ。「原作がまだ連載中なので、結末をどこに持ってくるのかについては奥嶋先生から先々の展開も教えていただき、長く話し合いました。改変するわけにもいかないですし、1回原作の要素をばらして要素を組み立て直した感じです」とも。
作品イメージのすり合わせについては、もともと鴨井、井上の映画の好みが似ていたことからもスムーズに進んだという。イメージとして挙がったのは映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズや『キングスマン』シリーズなどのポップなアクションもの。なおかつ「大ヒットインド映画『RRR』など音楽も含めて差し込んでいくような作品をイメージしました」と鴨井。井上は「ルックとしては、『男はつらいよ』のような日本の家庭の風景にバンパイアっていう異質なものがいる感じ。それに要素がてんこ盛りなんですよ。軸となるラブコメに加えてアクションなど、エンタメ要素がギッシリ詰まっているので、その分スタッフの数も多いです」と話す。
作品の世界観は原作に忠実でありながら、映画的な表現も工夫されている。鴨井は「原作から映像にするにあたって飛躍している表現もあります。映画を御覧いただくとビックリすると思います」
なお、撮影初期に苦労したというのが、蘭丸が葵の部屋を訪れ逆さ吊りの状態で話すシーン。鴨井は「クランクインまでの準備段階で1回、果たして逆さ吊りの状態でどれぐらい喋れるのかとテストしたんですけど、15秒、20秒が限界で“これは無理だ”と。どうやるのかっていう中で、普通に反転させると重力がバレてしまうので、合成とヘアメイクで髪の毛を逆立てるとか、いろいろなアイデアを出し合って撮りました。『スパイダーマン』でもスパイダーマン(トビー・マグワイア)とMJ(キルステン・ダンスト)の逆さキスがあったので、できるのかなと思っていたのがかなり難しかったですね」と振り返る。
撮影初日はなんと時代劇シーン。井上は「わたしたちはバンパイアのコメディー映画を撮ってたはずなんだけどうと……(笑)」、鴨井は「本能寺の変のシーンは本格的なライティングで撮っていますが、中ではバックハグとか膝枕が繰り広げられていたり(笑)。時代劇シーンを撮った後にヤンキー映画みたいなシーンを撮ったりもしました」と言い、一筋縄ではいかない作品の持ち味をうかがわせた。(取材・文:編集部・石井百合子)