トランプ氏、免責特権めぐり上訴も「判決が覆ることはない」米最高裁の重みと権威
バイデン大統領の機密文書の持ち帰りについてはおとがめなし
飯田)トランプ氏とバイデン氏の一騎打ちになったら、トランプ氏が勝つのではないかと言われています。普通は経済がよければ現職有利と言われますが、そうならないのですね。 吉崎)バイデンさんの方にも面白い話があります。以前、トランプさんが機密文書を家に持ち帰っていたことが問題になりました。これも別途5月20日ぐらいから初公判の予定ですが、バイデンさんも副大統領時代、自分の自叙伝を書くために機密文書を持ち帰っていたそうです。こちらはわかった時点ですぐに「ごめんなさい」と言って返したし、本人は記憶力にも問題があるのでおとがめなし、という話になっています。 飯田)警察がわざわざそれを認定したのですよね。 吉崎)そうなのです。そうしたら本人が「私の記憶力に問題はない」と言いながら、エジプトのシーシー大統領を「メキシコ大統領」と間違えて呼んでしまった。「ピラミッドは両方にあるけれど、えらい違いだぞ」とツッコミを受けていました。 飯田)そういうエピソードは豊富にありますが、きちんと論戦できるのでしょうか。
歴史ある最高裁の権威のためにもトランプ氏に忖度するような判決が出ることはない
吉崎)アメリカの最高裁には、やはり重みがあるのです。最近、9人の最高裁判事のうち6人が保守で、3人がリベラルであるということが言われています。だから今回も「トランプさんに有利な判決になるのではないか」と思う人も少なくないのですが、最高裁判事の立場になってみれば、すぐにわかる話だと思います。三権分立はアメリカによる発明で、司法の地位を高めたのもアメリカなのです。特に最高裁長官の立場になると、綿々たる200年を超える歴史があって、自分の代で変な判決を出そうものなら何を言われるかわからない。やはり歴史を自覚するわけです。 飯田)最高裁長官の立場では。 吉崎)しかも、長い歴史のなかでは最高裁の権威が落ちて、取り戻すのに苦労したことが何度もあります。ですから、ここでトランプさんにおもねるような判決を出したら「立ち直れないな」という思いがあるので、「変な判決は出ない」と申し上げておきたいです。