「本気を出していないだけ」先延ばしグセを悪化させる“思考の共通点”
自身も“先延ばしグセ”に悩み苦しんだ過去
――大平さんもかつて先延ばしするタイプだったと仰っていました。 【大平】実は、前職の頃は私自身も先延ばしグセが酷い人間でした。税関係のシンクタンクに勤めていたのですが、スキルアップに必要な税の勉強が全然進まなかったんです。そんな当時は「まだ本気を出していないだけ」が口ぐせでした。 自分の進みたい方向も決められていなかったので、周りが良いと言った情報に飛びついては飽きての繰り返しで...。そのおかげで積み上げた実績が何もない状態でした。 ダメな自分を変えたくて一発逆転を狙ったりもしたのですが、力み過ぎてうまくいきませんでした。そんな自分のことを責めて、できない言い訳を並べて物事の先延ばしを続けていました。 ――本の中で語られていることが、そのまま当てはまっていらっしゃったとは。そんな大平さんはどうして変われたのでしょうか? 【大平】きっかけは妻から「軸ナシ」と一喝されたことでした。そして今度こそ変わろうと決めた矢先に"アドラー心理学"と出合ったんです。 アドラー心理学は、過去の原因を追究するより、今あるものを活かして未来の可能性、目的を考えていく心理学です。これなら自分も取り入れて何かできるかもしれないと思い立って勉強を始めました。 アドラー心理学に則って先々の可能性について考えるようになると、いずれプロコーチとして独立して企業研修をしたい、本も出版してみたいなどと、自分が心の底からやりたいことに気づくこともできました。 明確に目標が見つかりその達成に向けて挑戦を続けていると、段々と企業のオファーをいただるようになったり、出版の企画も通過するようになりました。 ――やはり本心で見つけた目標って大切なのですね。過去と現在のご自身はどれくらい違うのでしょうか。 【大平】もう、かなり違うと思います。以前の自分は話すことが苦手で、会議で一言も発言できなかったり、企画も何も出せなかったり、いつも自己嫌悪していました。ほとんど行動ができていないのに、一発逆転を狙う毎日でした。 ですが、心理学やコーチングをフル活用して自分の方向性を確立させたら、物事が上手く循環するようになったんです。話し下手だった私でも講師の経験を積んだことで、話すことも好きになりました。 ――方向性一つ決めるだけで、それほど人生が変わるのですね。 【大平】思い通りいかない時期が10年ほど続いたんですが、その10年があるからこそ本が書けているとも思います。 ダメだった当時の自分に対して「こう考えればいいんだよ」「こうしてみたら」と、語りかけるように本に落とし込んでいきました。だから、今では諦めずにもがいた10年間に感謝しています。 もし、かつての私のように何もかもうまくいかず、もがき苦しんでいる方がいたら、まず思うようにできない自分を責めるのをやめてください。そして、自分が心の底から好きなことや大事にしたいことが、どんなことだったか思い出してみてください。 それに気づくことができたら、「私はこっちに行きたいんだ」と方向性を定める。肝心なのは大きく変わろうとぜず、小さな変化を積み上げることです。地味ですが、少しずつ先延ばしを減らせらば、必ずなりたい自分へと向かっていくことでしょう。
大平信孝(メンタルコーチ)