「ごめんね、お母さん」気づいたときには遅かった《親の認知症のサインが潜む》実家の3つの場所とは?
今年のお盆はいかがお過ごしですか? 帰省する方も多くいらっしゃると思います。久しぶりに実家の家族と顔を合わせる嬉しい機会という人も多いでしょう。 ◆【図表1枚目】一人暮らしの親について気がかりなこととは?(出所:LIFULL senior) でも、シニア世代の親を持つ方の中には「なんとなく違和感」を覚えるような場面があるかもしれません。気のせいかも、と思ってやりすごしてしまうと、実はそれが認知症の兆候であったとう場合も少なからずあります。 株式会社LIFULL seniorの調査結果(※)によると、一人暮らしの親について気がかりなことの第2位に「認知症を発症していないか」が挙がっています。一人暮らしではなくとも、離れて暮らすシニアの親の認知面が心配という人は多いでしょう。 今回は、認知症の実母の介護経験を持つ筆者が「早く気がついていれば…」と後悔する、親の認知症のサインが潜む3つの場所についてお話しします。このお盆休みに実家に帰省した人はぜひ確認してみてください。 何かしらの「違和感」が生まれたら、ぜひスルーせずに向き合うことが大切です。それが大切な家族の暮らしやお金を守ることにも繋がっていきます。 【調査概要】LIFULL 介護「一人暮らしの親」へのサポートに関する調査 ・調査主体:株式会社LIFULL senior ・調査期間:2024年7月9日~7月10日 ・調査対象:離れて暮らす一人暮らしの親を持つ40歳以上の男女873名 ・調査方法:インターネット調査 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
お盆の実家でココを見る!親の認知症のサインが潜む3つの場所《初期症状を見逃すべからず》
「自分の親はまだまだ元気だから」と親の老いに気づかないふりをしたくなる気持ちはわかります。また、自分の親が認知症かもしれないなど、できれば考えたくないというのが多くの人の本音だと思います。 筆者は認知症の実母と7年間過ごし、先日看取りを終えました。今になって振り返ってみると「あの時、何となく変だと感じていたアレは、結果的には認知症の初期症状だったのだろう」と思うことが多いです。 シニアの親のささいな変化は見逃すべからず。「自分の気のせい」「うちの親は変わり者だから」とスルーするのは避けたほうが良いかもしれません。 お盆の実家では、親とゆっくりすごす時間も大切にしたいところですが、親がいつも使っている“場所”についてもちょっと確認してみてください。 ●認知症のサインが潜む場所 その1「冷蔵庫」 まず確認したい場所は「冷蔵庫」。以下のような状態だったら要注意です。 賞味期限切れの食品だらけ! 夏場だから足がはやいものが多く傷んでしまっているのは仕方ない、というようなレベルではなく、数か月過ぎてしまったようなものもそのままになっている。 保存方法が不適切 食べ物がむきだしになっていて干からびた状態になっていたり、本来冷凍庫に入れるべき冷凍食品が冷蔵されていたりする。 食品のバランスや量が不自然 骨粗鬆症を気にしているとはいえ、1リットルの牛乳が5~6本も入っている。とんかつソース、中濃ソース、ウスターソース、オイスターソースなど到底使い切れないような量の使いかけの調味料がそれぞれ複数入っている。 ついうっかりや単なる物忘れとするにはちょっと不自然な状況であったら、それは親の味覚や食欲、思考力の低下が原因という可能性も。栄養バランスを考えて毎日の献立を考えるのに支障をきたしているのかもしれません。 筆者は、たまたま帰省した際に、実家の冷蔵庫に納豆が大量に入っているのを発見しました。母は「カラダのために毎日食べている。ストックがないと不安」と言っていたのですが、既に賞味期限から数カ月経っているものを冷蔵庫の奥から何個も発見したときは愕然としました。 親が毎日使っている冷蔵庫は、健康状態や食生活がどんなであるかという情報が詰まっているのです。 今の時期なら冷たい飲み物やアイスを探しながら、さりげなくチェックすることもできる場所。ぜひ意識して見てみましょう。 ●認知症のサインが潜む場所 その2「お風呂場」 当たり前のように親は清潔な状態を保てていると思うかもしれません。ところがパッと見ではわからなくても、親と長時間一緒にいてふと匂いや衛生状態が気になるようなことがあったら、ぜひお風呂場を確認してみてください。 汚れているもしくは逆に綺麗すぎる! 浴槽や床などがきちんと掃除されておらず汚れている。もしくは、綺麗ではあるが最近、お風呂場を使ったような形跡が感じられない。 石鹸やシャンプー類にも注目 こちらも食品と同じようにストックが大量にある。浴室内のポンプがどちらもトリートメントになっていてシャンプーが見当たらない。 そもそもお風呂場に近寄りたがらない 「疲れたから」「面倒くさい」などと言って入浴しようとしない。 一日の汚れを落としリラックスできるはずの入浴を億劫がるのも、認知症の兆しかもしれません。 一人で入浴するのが不安、服の脱ぎ着がしにくいため面倒に感じる、嗅覚の衰え(※)で自分のにおいに気づけないために、入浴の頻度が減っている可能性も。 入浴はできていたとしても、お風呂場の掃除まではなかなか気が回らなかったり、シャンプーとトリートメントを間違えて適切に使えていなかったりということもありえます。 おかしいと思っても面と向かって「お風呂に入ってる?」とはなかなか切り出せないもの。単に清潔かどうかというだけでなく、血行促進や新陳代謝を促す意味でもお風呂は大切です。 住宅改修や福祉用品のレンタル(手すりなど)、介護保険を活用してできる対策は多いです。担当のケアマネジャーや、地域包括センターに問い合わせてみると良いでしょう。 ※嗅覚の衰え:認知症の前駆症状の一つとされています。 ●認知症のサインが潜む場所 その3「たんす・クローゼット」 親が衣服などを収納している場所を、勝手に開けたり片づけたりすることを躊躇するという人もいるでしょう。 しかしながら、筆者が「一番気をつけて見ておけばよかった」と後悔しているのがこの場所です。以下のポイント、気になる点はありませんか。 整理整頓ができていない シミがついたり虫食いしたりした、もう着られないような衣類までしまい込んである。 衣替えをした形跡がない 例えば今の時期、猛暑が続いているのに厚手のセーターなどがすぐ目につくところにしまわれている。 衣服ではない“謎の日用品”などが混在 思い出の着物などを大切にしまっていた和ダンス。ふとしたきっかけで開けてみたところ、普段使っている財布や、数年前に処方された大量の薬を発見 几帳面だったはずの親が整理整頓できてないとわかれば、何かおかしいと気づくはず、と思うかもしれません。とはいえ、親子とはいえなかなか引き出しの中をごそごそチェックするのは憚られますよね。 だからこそ、見過ごしてしまいがちなのです。筆者の場合も、後から思い当たることがたくさん出てきました。 真夏にフリースの上着を羽織っていた母。「クーラーの風が当たって冷えるから」といった理由ではなく、暑さそのものを感じる力が弱まっていたようです。このとき既に認知症の中核症状の一つ「見当識障害(※1)」が始まっていたのではないか、と思われます。 ほかにも「薬を誰かに盗られた」「財布を盗まれた」といった発言を繰り返し、家族や介護スタッフさんを疑うようなこともしばしば。筆者とのいさかいも絶えることはありませんでした。 でも、思えばこれも認知症の典型的な周辺症状である「物盗られ妄想(※2)」からくる行動だったのでしょう。 母の言動に振り回されていた当時、もし引き出しやクローゼットから見られるサインに気づいていればお互い疲弊しなくて済んだのに……と後悔します。 後日主治医にこの出来事を伝えたところ、「僕の処方した薬をそんなに大事にしてくれていたんだね」と一言。大切なものだからしまっておきたい、そしてしまい込んだ場所を忘れてしまう。そういうことなのでしょう。 筆者のような後悔をしないためにも、帰省したら「昔のあの浴衣を見せて」とか「よく似合う新しい服を買ってきたから古い服と入れ替えようか、私も手伝うよ」などとさりげなく声をかけ、タンスやクローゼットの中もチェックしてほしいです。 ※1 見当識障害:いまの場所や時間、季節が分からなくなること ※2 物盗られ妄想:大切なものをどこかにしまったことを忘れたり、紛失してしまったことを自覚できず「誰かに盗まれた」と妄想してしまうこと