[国スポ少年男子]広島県が8年ぶりVへ王手!一体感を持ってひたむきに戦い続け、堅守、スーパーFK弾で福岡県を上回る
[9.24 国スポ少年男子準決勝 広島県 2-0 福岡県 駅スタ] 広島が2度目の全国制覇へ王手――。24日、「SAGA2024第78回国民スポーツ大会」サッカー競技少年男子の部準決勝が鳥栖市の駅前不動産スタジアム(鳥栖スタジアム)で行われ、広島県と福岡県が激突。広島がMF河上颯希(広島ユース、1年)とFW信重亮二朗(広島ユース、1年)のゴールによって2-0で勝った。広島は2019年大会以来となる決勝進出。決勝で2016年大会以来2度目の日本一をかけて開催県の佐賀県と戦う。 ともに優勝歴を持つ福岡と広島との4強決戦。紙一重の戦いを広島が制した。広島は強豪・広島ユースの1、2年生中心に瀬戸内高の4選手を加えたメンバー構成。今大会は初戦で得点王候補のFW菊山璃皇(広島ユース、1年)が負傷離脱し、U-16日本代表の司令塔・MF野口蓮斗(広島ユース、1年)が先発を務める広島ユースのプレミアリーグWEST延期の影響で準々決勝まで国スポに出場できなかった。 アクシデントが続いたが、乗り越えての決勝進出。遠藤真仁監督(広島ユース)は「(広島ユースの選手たちは)普段は(いずれもU-19日本代表でトップ昇格組の)井上愛簾とか木吹翔太、(中島)洋太朗とかと一緒に練習をしているので。本当に3年生と練習しててやられっぱなしでちょっと自信をなくしている部分もある。(瀬戸内の1年生も所属チームで同じような状況にあるが、)そういう中で自分たちの学年で良くも悪くもこうやって一体感を持って、主体的に自信持ってやれているのが、ピッチで凄く一生懸命表現できている。それを、もう1試合できるっていうのが嬉しいです」と喜んだ。 前回大会4位の広島は今大会、2回戦から登場し、高知県、埼玉県を下して準決勝進出。この日の先発はGKが山田真叶(広島ユース、1年)で、DFが井上礼治(瀬戸内高、1年)、森井莉人(広島ユース、1年)、小柳柊(広島ユース、1年)の3バック。今大会初出場となる野口と太田大翔(広島ユース、1年)のダブルボランチ、右WBが主将の梅田大翔(広島ユース、2年)で、左WBが原湊士(広島ユース、1年)、2シャドーに岡朔太郎(瀬戸内高、1年)と河上が入り、1トップに得点ランキング首位タイ3得点の信重という陣容でスタートした。 一方、福岡は1回戦から出場して長野県、新潟県、そしてV候補の東京都を下して2015年大会以来の4強入り。準決勝の先発はGKが野上陸翔(北九州U-18、1年)、DFは右から斉藤大生(東海大福岡高、2年)、藤川虎三(福岡U-18、1年)、主将の落合春翔(北九州U-18、1年)、本多巧來(福岡大若葉高、1年)の4バック。中盤は坂本馳空(飯塚高、1年)がアンカー、2列目に右から能武麟太朗(東海大福岡高、1年)、鬼塚桂汰(東福岡高、1年)、辻本悠太朗(東海大福岡高、1年)、武本匠平(福岡U-18、1年)が並び、1トップをFW鶴元銀乃介(飯塚高、2年)が務めた。 前半、広島は野口が攻撃を落ち着かせながら、ゲームメーク。河上と岡、信重が相手1ボランチの脇やDF背後を狙いながら動き、左の原が突破力を発揮して一気にドリブルで前進する。13分に信重が右サイドを抜け出してラストパスへ持ち込み、18分には相手DFからボールを奪った信重がそのままシュートへ持ち込む。このシュートは福岡CB藤川がカバーしてブロック。先制点を許さない。 一方、鶴元や武本らアタッカー陣に推進力のある福岡は、両ワイドが斜めの動きでスペースを狙うなど広島DFにプレッシャーをかける。ややアバウトなボールに対しても迫力を持って走り込み、処理しようとする広島DFに圧力。ミスを誘い、こぼれ球を狙おうとしていたが、広島は森井を中心に井上、小柳といずれも守備能力が高い3バックが弾き返していた。 遠藤監督は「(相手のワイドの選手が)見えないところから入ってくる。それはやり辛かったです。(でも、混戦になっても)ギリギリのところで頑張って、そこからプレスバックしたいっていうところで中盤の選手もしっかりやってくれていた」。回収力抜群の太田、またプレミアリーグで揉まれて守備力向上の野口がボールを奪う回数を増やしていた。そして、攻撃面では太田、岡のミドルシュートや右クロスから原の放ったシュートでゴールを目指したが、0-0で前半終了。その広島は、後半開始から岡に代えてMF浅沼凌弥(広島ユース、1年)を投入した。 対する福岡は、1ボランチの坂本が要所でカバーしていたほか、右SB斉藤がこの日も守備力を発揮するなどDFラインが我慢強い。そして、活動量の多い辻本や鬼塚がボールに係わる回数を増やして仕掛けへ持ち込もうとする。12分に鬼塚、能武をMF松浦拓夢(福岡U-18、1年)とFW前田陽輝(福岡U-18、1年)へ入れ替え、鶴元を右サイドへ。東京相手にも力強い動きを見せていた前田、鶴元、武本が広島にプレッシャーをかけ、セットプレーからシュートも放ったが、GK山田の守る広島ゴールを破るまでには至らない。広島も野口がマークを外してパスを繋ぐが、切り替えが速く、強度も高い福岡の前に、梅田、原の強力な両翼もなかなか活かすことができなかった。 3連戦で体力的にも厳しい戦い。試合は膠着する展開となった。広島の井上は、「広島はやっぱり平和の象徴の県だと自分の中で思ってるので。困難な状況でもひたむきにやり続けるっていう気持ちでプレーしているところは変わらないです」という。この日、困難な状況でより力を発揮したのは広島の方。プレースキックのスペシャリスト、河上のスーパーゴールで先制する。 後半19分、広島は敵陣中央で信重がFKを獲得。右利きの野口と左利きの河上がボールの側に立つと、河上が左足を振り抜く。人壁の上を越えたボールは鮮やかな曲線を描きながらゴール左上へ。味方選手も驚く一撃でスコアを動かした。 広島は先制直後に信重のプレッシングでまた盛り上がる。対する福岡は24分、辻本、坂本をMF三浦亮将(北九州U-18、1年)、FW細入巧幹(東福岡高、1年)と入れ替え、2トップへ。だが、広島は28分、中央からボールを運んだ河上が左足で右前方へスルーパスを通す。浅沼の右足シュートはGKに阻まれたが、こぼれを信重が右足でゴールへ蹴り込んだ。 広島の遠藤監督が「ずっと昔から見ていますが、彼(信重)は絶対ああいうこぼれ球で足を止めることはない。ゴール前で足を止めないっていうのは、凄いFWらしい選手ですね」と評した信重が、得点ランキング単独首位に立つ今大会4得点目。この後、攻撃がやや単調になってしまった福岡に対し、広島は井上と信重をDF礒合宇宙(瀬戸内高、1年)とFW牧野太河(広島ユース、1年)へ入れ替えて無失点で試合を締めた。 広島は5年ぶりの決勝進出。遠藤監督は「(将来のある選手たちにとって、)ここがゴールではないですけど、この経験値っていうのは上に行くためには絶対に必要。何とかみんなで勝ち取ろうね、っていう話をして、しっかり体現してくれている」と頷く。 開催県・佐賀との決勝(駅スタ)で勝てば、MF東俊希(現広島)らを擁した2016年世代以来となる日本一。タイトに戦ってくる相手に対し、同じ特長を持つ広島が負ける訳にはいかない。野口は「(広島らしく)走ることもそうですけど、やっぱ声出したり、まとめたりするところをやっていったらいいかなと思います」と語り、河上は「絶対勝って、東俊希選手の代の次に名を刻めるように頑張りたい」と誓った。陰でチームを支える菊山やGK岸田湊(瀬戸内高、1年)を含めて決勝もひたむきに戦い抜き、“アウェーで”全国タイトルを獲得する。