【安倍政権と沖縄】 翁長・沖縄県知事 なぜ安倍政権の閣僚に「会えない」の?
日本の首相が知事と会う場合も似た点があります。「地域視察の際に知事が出迎える」「首相官邸に特産品を持ち込み、報道陣に公開する」といった場合、知事は「首相と親しい」ことを大きくアピールできる利点があります。首相側にとっても、親しみやすさを訴える良い機会です。 これらの「宣伝」「儀礼」「選挙応援」「知事会などの会合」といったケースを除くと、実は「首相+知事」の会談はそう多くありません。個別の課題があっても、テーマごとに農水相や環境相などの担当閣僚が応対するのが普通です。 過去には、首相と知事の「会う・会わない」を巡って、政治的駆け引きが行われた例も少なくありません。1998年には核廃棄物輸送船の入港をめぐって地元の青森県側が態度を硬化させ、知事が「首相と会談できなければ重大な決断を行う」として、政権側に一時的な“圧力”を掛けたことがあります。沖縄県でも1990年代後半、やはり基地問題をめぐって地元と中央の対立が激しくなり、首相・官房長官と知事の間で「会談する・しない」という状況が続いたことがありました。「担当閣僚+知事」というレベルになると、原発問題のほか、諫早湾の干拓、ダム開発などで「会う・会わない」がしばしば起こります。 今回の安倍政権と翁長知事の会談をめぐっては、菅官房長官が1月14日の記者会見で「私は会いません」と明言して以降、膠着が続いています。辺野古移設を断固進めるという安倍首相、絶対反対を掲げて当選した翁長知事。安全保障という国の根幹に直結する問題だけに、今回ばかりは「担当閣僚任せ」で済まないかもしれません。一方、政権側が翁長知事を納得させる具体策を持たない以上、「首相+知事」会談を実現させても、首相は「言い分を聞いた」で終わる可能性が大です。その場合、知事は「首相相手に堂々とモノを言った」として地元の賞賛を受けるかもしれませんが、首相が得るものはほとんどない、と思われます。 そうした中、「移設反対」の民意を無視した形で、工事だけは進んでいく──。この状態を打破するために、双方はしばらく、水面下で打開策を模索する状況が続くでしょう。