【安倍政権と沖縄】 翁長・沖縄県知事 なぜ安倍政権の閣僚に「会えない」の?
米軍普天間飛行場の辺野古への移設反対を掲げる沖縄県の翁長雄志知事が、安倍晋三政権の主要閣僚に会談を拒まれる状態が続いています。保守も巻き込む「オール沖縄」体制の下、昨年11月の知事選に勝利した翁長氏。その知事との会談に応じないとあって、「政権による民意軽視」「沖縄差別だ」といった声も出ていますが、そもそも政治家同士の会談にはどんな意味があるのでしょうか。 この問題が最初に浮上したのは昨年末のことです。 当選間もない翁長知事は衆院選の結果が出るのを待って東京に行き、農相らとの面談を求めましたが、「大臣日程が取れない」(農林水産省)などの理由で会えずじまい。年明けに再び農相らとの面談を求めましたが、やはりダメ。農相との面会は沖縄特産のサトウキビ関連の交付金に関する要請が目的で、関連の会合には沖縄県選出の自民党議員らは招かれていました。過去、このサトウキビの関係で、沖縄県知事が農相との面会や会合出席を断られたケースはなかったとも言われています。 このほか、翁長知事は、安倍晋三首相や菅義偉官房長官(沖縄基地負担軽減担当)とも会えていません。1月14日には首相官邸に出向きながら、応対したのは閣僚ではない副官房長官でした。同16日には沖縄振興予算などを担当する山口俊一大臣(北方・沖縄担当)と内閣府で会いましたが、今のところ、これが知事就任後、閣僚と会談した唯一の機会のようです。 菅長官は「(自分も総理も)今のところ会う必要はない」との姿勢を崩しておらず、翁長知事が望む安倍首相との会談は当面、実現の可能性は低そうです。
ところで、そもそも他の都道府県知事と首相の会談は、どの程度の頻度で行われているのでしょうか。 新聞各紙などに毎日掲載されている首相動静のうち、昨年7月から今年1月初旬までの約半年間を対象として、安倍首相と各知事との会合(地元での「出迎え」を含む)を拾ってみました。すると、「首相と知事」は約30回です。単純計算すれば、月に5回ほどは知事の誰かと会ったことになります。東京、三重、香川などの各知事は複数回。全国知事会の会長を務める京都府知事、原発問題を抱える福島県知事、そして翁長氏の前任・仲井真弘多氏とも複数回の面会が記録されています。 首相の日程は超過密です。政府の重要会合、国会出席などに加え、各省庁の幹部や財界人、外国政府高官らとの面談がぎっしりです。しかし、そうした合間を縫うように各地の知事に会っていることを考えると、「時間が取れない」は会わないための理由付けにすぎないことも明白です。 では、「首相に会う」とはどういうことでしょうか。外国首脳との会談を例として考えれば、わかりやすいかもしれません。 首脳会談は普通、数カ月から時には数年の準備期間を経て行われます。双方の当局者が事前に議題や方向性などを煮詰め、共同声明を出す場合には文案をほぼ固めてしまいます。首脳同士の顔合わせはそれらの「総仕上げ」の場合が多く、一部の例外を除いて「成果を効果的にアピールするセレモニー」ともなります。逆に言うと、当局者同士の打ち合わせが十分でなかったり、対立したままだったりすると、首脳会談後に「成果」を誇ることはできません。それどころか、「外交の失敗」は世界を駆け巡り、首脳の信頼は大きく失墜するでしょう。